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2021/04/22

「スモールビジネスをエンパワメントしたい」yup阪井氏がシンプルに解決したい”資金繰り”の課題とは?- 8 Answers Vol.05 Yu Sakai

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8 Answers yup

執筆者:

古川 真也

既存の経済・社会の仕組みやルールでは達成できない「インパクト」を創出すべく、課題解決に挑む挑戦者と、彼らに伴走し続けるベンチャーキャピタリストの対談シリーズ「8 Answers」。起業家が社会に残そうとしている価値や情熱を伝えるシリーズだ。

今回は、yup株式会社の代表取締役社長の阪井優氏が登場。同社は、フリーランスや中小企業向けの報酬即払いサービス「先払い」を提供している。取引先に送った入金前の請求書情報を登録すると、最短60分で報酬を受け取れるサービスだ。

阪井氏は、かつてのアルバイト先の町工場の社長やフリーランスの友人に資金に関する悩みを聞いたことから、フリーランスや中小企業の資金確保の難しさを実感。2019年にyupを創業した。その彼を、インキュベイトファンド株式会社 代表パートナーの赤浦徹は創業前から支えている。
赤浦は阪井氏を、「類まれなセンスと誠実さを兼ね備えた起業家だ」と評する。実直に事業に向き合う阪井氏の姿勢とモチベーションの源泉に迫る。

【プロフィール】

阪井優 氏(yup株式会社 代表取締役社長)
1989年、大阪府堺市生まれ。智辯学園高等学校、大阪教育大学卒業後、NTTドコモ、コイニー(2018年に「hey」のグループ化)を経て、2019年2月にyupを創業。友人のフリーランスの資金繰りの大変さに衝撃を受けたことから、「スモールビジネスにやさしい支払い・請求で新しい挑戦を後押しする」というミッションのもと『yup(ヤップ)先払い』の開発をしている。「TechCrunch Tokyo2019」ファイナリストに選出。趣味は散歩。

赤浦徹 (インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー)
新卒からジャフコにて8年半投資部門に在籍し、前線での投資育成業務に従事。1999年にベンチャーキャピタル事業を独立開業。以来一貫して創業期に特化した投資育成事業を行う。2013年7月より一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会理事。2015年7月より同協会常務理事、2017年7月より副会長。2019年7月より会長。東海大学工学部卒。 

資金繰りに悩む時間を、「付加価値」を生み出す時間に変える

──今日はよろしくお願いします! はじめに、yupの事業内容について教えてください。

阪井:私たちは「スモールビジネスをエンパワーメントする世界的な金融サービスを創る」をミッションに掲げ、フリーランスに向けた報酬即日払いサービス「先払い」を提供しています。取引先に送った請求書を「先払い」に登録すると、最短60分で報酬が入金されます。後日、ユーザーが取引先から報酬を受け取ったら、その金額をyupに支払う仕組みです。

フリーランス向け即日支払いサービス「yup」の紹介動画

こうした先払いのサービスは、大企業では手形割引などの形で一部に普及しています。しかし、フリーランスや中小企業には、ほとんど浸透していません。請求書の発行から報酬の受け取りまでに1〜3カ月ほど待たされることが多く、資金繰りに悩むケースが少なくないんです。報酬を受け取るまでのあいだ、不安定な生活を強いられたり、事業資金の建て替えに困ったりしてしまう。その課題を解決したいと考えて、2019年の9月にリリースしました。

──フリーランスや中小企業には、そういった課題があるのですね。ユーザーからの反響はいかがでしょうか?

阪井:2021年2月の時点で、累計申し込み数が7,000件を突破しました。デザイナーやエンジニア、コンサルタントやライターの方などにご利用いただいています。「資金繰りの心配が軽減され、取引できる企業の幅が広がった」という声も寄せられていて、非常に嬉しく感じます。

スモールビジネスの「現場」の声からインサイトをつかむ

──阪井さんは、なぜフリーランスの資金繰りの課題に目を向けたのでしょうか?

阪井:取引先からの入金が遅く、資金繰りに困っている事業者の声を聞く機会が多かったんです。
大学時代に小さな町工場でアルバイトをしていたのですが、社長から「取引先に請求書を送っても、入金までの期間が長く、資金繰りで頭を悩ませている」という話を聞いていました。前職のコイニーで決済システムを提供していた時にも、飲食店のオーナーさんが、「クレジットカードの売上が入ってくるのが1カ月後で、請求書払いだと2〜3カ月はかかり、資金繰りが厳しい」とまったく同じ悩みを話していました。

この課題を解決するには、請求と入金のタイムラグを埋めなければいけない。代金を受け取る権利である「売掛債権」を現金化することで、入金前にお金を受け取れる「ファクタリング」が解決策になるかもしれないと考えました。

そこで、国内のサービスをいくつか調査してみました。しかし、手数料が20〜30%ほどかかる、いわゆる「闇金」のようなサービスしか見当たらなかったんです。一方、海外では「BlueVine」や「Fundbox」など、クラウドで行えるファクタリングサービスが盛り上がりはじめていました。これを日本に持ち込むことで、資金繰りの課題解決にもなりますし、市場の開拓にもつながるはずだと考えたんです。

──日本ではまだ、ブルーオーシャンだと。

阪井:そうですね。同じ市場に着目した企業が他にも存在し、2017年末にOLTAが法人向けのファクタリングサービスをローンチしました。働き方が多様化し、フリーランスの人口が増えている中で、法人だけではなくフリーランスのニーズもあるはずだと考え、2019年の2月にyupを創業しました。

ど直球の発想と、誠実さが阪井さんの魅力

──赤浦さんは、阪井さんがyupを立ち上げた直後の2019年9月から出資をされています。どのようなきっかけから、阪井さんのことを知ったのですか?

赤浦:2018年の年末に開催したCIRCUIT MEETINGで出会いました。これは、創業前後の起業家を対象に、投資家と起業家が1on1でミーティングし、相互に評価し合いながら出会いのきっかけを創るプログラムです。当時の阪井さんは、コイニーに在籍していて、起業に向けてファクタリングの事業案を練っている段階でした。私としてもチャレンジしたいテーマであったのと、阪井さん自身も非常に魅力的でしたので一緒に深掘りしてみたいと思ったのが最初です。

──どのような点が面白いと感じたのでしょうか?

赤浦:通常のファクタリングと違い、取引先が介在しない「2者間ファクタリング」のシンプルさが画期的でした。ファクタリングは、ユーザーとその取引先、ファクタリング会社で行われる「3者間ファクタリング」が主流です。2者間ファクタリングは、より回収リスクが高くなりますが、与信管理のノウハウとしくみ次第でリスクを軽減でき、ポテンシャルが大きいと考えました。
個人的には、以前、出資させていただいていた請求書発行代行サービスのmisocaにて将来的にレンディング事業を見据えていたのですが、道半ばで弥生へバイアウトすることとなってしまい、実現することができていませんでした。

この領域にシンプルに真正面からチャレンジしようとする阪井さんのアイデアにピンときてすぐに出資を決めました。

──即断即決してしまうほど、心をつかまれたのですね。出会いから2年以上が経ち、阪井さんと日々伴走していると思います。どのような点が魅力だと思いますか?

赤浦:阪井さんは、私の好きなタイプど真ん中の起業家なんです(笑)。とても誠実で着実に努力を重ねることができる人。阪井さん自身、フリーランスの経験がないので、ユーザーヒアリングを徹底して、行っているんですね。

そして皆から好かれ、人を惹きつける力があり、優秀なチームを創ることができる。メンバーの力を引き出すマネジメントができているのか、みんなが自主的に、熱量をもって取り組める良いチームを創られています。

阪井:ありがとうございます。とても嬉しいです。「誰かのために少しでも役立ちたい」という思いがモチベーションになっていますね。

ユーザーの新たな挑戦を後押しするために、yup自身も挑戦者であり続けたい

──誠実さを武器に着実に前進している印象を受けます。今は、どのようなメンバーとともに事業を作っているのですか?

阪井:現在は、フルコミットの3名のメンバーのほか、副業で参画しているメンバー、インターン生で事業を作っています。インターン生にも赤浦さんをはじめとした投資家とのミーティングに参加してもらうなど、役職や業務形態にかかわらず、優秀で熱量のあるメンバーには大きな裁量を持たせています。

事業にはしっかり向き合うことを前提として、メンバーとのコミュニケーションを大切にしています。年齢も近いので、定期的にメンバー同士での食事会を開いたり、誕生日を祝ったりもしているんです。

yupのメンバーと。2021年4月1日で2周年を迎えた。

──メンバーを大切にして、事業にも真剣にコミットしている様子が伝わってきました。

阪井:ありがとうございます。最近は拡大を見越して採用にも力を入れたり、社内のナレッジを蓄積しようと、情報共通ツールのesaを活用したりしていますね。

──採用を強化してくそうですが、どんな人と働いていきたいですか?

阪井:ユーザーの新たな挑戦を後押しするために、yupのメンバー自身もチャレンジャーであり続ける必要があると思っています。そのため、向上心や学習意欲の高いメンバーとともに、ミッションの達成に向けて進んでいきたいです。資金繰りで困ったという原体験があるとユーザーの悩みに寄り添いやすいと思いますし、そういった経験がなくても、ユーザーに実直に向き合える人であれば、非常にやりがいがあるように感じられます。

──ユーザーの理解に徹する姿勢を大切にしているのだと感じました。今後、yupの事業を通してどのようなインパクトを社会に与えていきたいのでしょうか?

阪井:直近では、フリーランスや中小事業者の資金繰りの課題を改善していきたいです。サービスを軌道に乗せた矢先には、「スモールビジネス」をエンパワーメントしていきたいと考えています。スモールビジネスに関わる人たちが効率よく商売できるサービスを開発し、資金面での心配をすることなく、自分自身のバリューを発揮できるようなお手伝いをしていきたいです。

──赤浦さんは、いかがでしょうか。yupに対する期待を教えてください。

赤浦:金融の世界の融資の仕組みは、担保をベースにしたものでずっと変わっていない。yupのサービスはとてもシンプルな仕組みで、ある意味で尖っているサービスです。シンプルにスケールさせながらも、独自の与信管理システムを構築して、独自のレンディングのシステムの構築に向けて、阪井さんと伴走し続けたいと思っています。

阪井:ありがとうございます。とても心強いです。

──ありがとうございました!

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古川 真也

寄稿者

インキュベイトファンドにてインターン中の大学三年生。yup株式会社にて事業開発、フリーランスエンジニアも兼業している。趣味は温泉巡り。

インキュベイトファンドにてインターン中の大学三年生。yup株式会社にて事業開発、フリーランスエンジニアも兼業している。趣味は温泉巡り。

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