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2021/03/1

マッキンゼーで実績を積んだシニア・パートナーがインキュベイトファンドに参画。ベンチャーキャピタル業界に起きる地殻変動とは?

執筆者:

Zero to Impact編集部

2021年3月、創業以来、初めてインキュベイトファンドに新たなゼネラルパートナー(以下、GP)が参画する。リクルートやマッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、マッキンゼー)でキャリアを積んできたポール・マクナーニだ。マッキンゼーではコンサルタントの最高位であるシニア・パートナーとして、アジア太平洋地域のマーケティング・アンド・セールスグループや小売・消費財グループの責任者を歴任してきた。

世界を代表するコンサルティングファームからベンチャーキャピタルへの移籍は、日本から世界で戦える企業を生み出すことや、ベンチャーキャピタル業界に優秀な人材を呼び込むことにつながると、インキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹は期待を寄せる。

マクナーニは、なぜインキュベイトファンドへの参画を決めたのか。彼の参画によって生まれる変化とは。参画の経緯と今後への期待をマクナーニと赤浦に聞いた。

■プロフィール

ポール・マクナーニ 
オーストラリア・キャンベラ生まれ。1997年にリクルートに⼊社し、デジタル事業の⽴ち上げとネット系企業のベンチャー投資を主幹。リクルート在籍時にメディオポート(オンラインゴルフ予約)の⽴ち上げに参画し、2002 年に楽天に事業を売却。
2002年にマッキンゼーに入社。2007年にパートナー、2014年にシニアパートナーに昇格。アジア太平洋のマーケティング&セールスグループの責任者、アジア太平洋のアナリティクスグループの責任者、QuantumBlack Japan のマネージングパートナー、アジア太平洋の消費財・⼩売グループの責任者を歴任。マッキンゼーにおいて⼩売、消費財、メディア、通信、⾦融、製薬の各業界の顧客に対して成⻑戦略やデジタル・AI、ブランディング、マーケティング、M&A の各領域における戦略と事業⽴ち上げの⽀援を実施。
2021年3月より、インキュベイトファンド代表パートナー就任。

赤浦徹 
ジャフコにて8年半投資部門に在籍し前線での投資育成業務に従事。1999年にベンチャーキャピタル事業を独立開業。以来一貫して創業期に特化した投資育成事業を行う。2013年7月より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会理事。2015年7月より常務理事、2017年7月より副会長、2019年7月より会長。

インキュベイトファンドの進化には、ポールの力が欠かせなかった

──インキュベイトファンドは、創業からの10年間、4人のGPがパートナーシップを組んで運営してきました。なぜ、今回マクナーニさんが新たにGPとして参画することになったのでしょうか?

赤浦:インキュベイトファンドが進化を遂げるためには、ポールの力が欠かせないと感じたからです。

私は「21世紀のソニー、松下、トヨタ、ホンダが生まれるきっかけを作る」を人生のミッションに掲げ、志を同じくする3人のGPと共に、さまざまな企業の創業期の支援に力を注いできました。しかし、まだまだ世界で戦えるような企業が生まれていません。

インキュベイトファンドの4人のGPが出資した企業のなかで、もっとも時価総額が高いのが本間(インキュベイトファンド代表パートナー 本間真彦)が独立前のワークスキャピタル時代に出資したMonotaROの約1.7兆円、次いで私が出資したSansanの約2,900億円です。どちらの企業も大きく成長しましたが、世界に目を向けるとAppleやマイクロソフト、サウジアラムコなど、世界トップクラスの企業の時価総額は約200兆円に及びます。日本国内でもっとも時価総額が高い約26兆円のトヨタが、ようやく世界で50番以内に入ります。

世界で戦うためには、時価総額が数十兆、数百兆円規模の企業を育てる必要がある。そのためには、起業家にリソースを提供していく私たち自身も、バージョンアップをしていかなければいけません。

進化のためにどんな手を打つべきか。そんなことを考えていた時に、ポールと街で偶然再会したんです。それをきっかけに朝食MTGをして、「ベンチャー投資に関心がある」と聞きました。

──お二人はもともとの知り合いだったのですか?

赤浦:実はポールとは、1999年からの付き合いなんです。私が独立開業前から携わっていた「ゴルフのオンライン予約サービス」のプロジェクトがあったのですが、2人ともその運営会社のメディオポートの社外取締役でした。サービスの立ち上げからエグジットまでを一緒に経験させてもらいました。当時ポールはまだ20代だったと思います。

マクナーニ:はい、27歳でした。僕はリクルートに在籍していたのですが、同僚が会社を辞めて起業したので、社外取締役という形で個人で出資をしていたんです。赤浦さんとご一緒してみて、投資家として起業家に助言をして意思決定を促す姿がとてもエキサイティングで、「いずれはベンチャー投資の道に進みたい」と漠然と考えるようになりました。

赤浦:ポールがインキュベイトファンドのGPになるところを想像してみたら、非常にワクワクしたんです。彼の能力が加わることで、インキュベイトファンドが大きく前進できるはずだと思えました。

2021年3月にインキュベイトファンドに参画するポール・マクナーニ

──進化のために必要な存在が、マクナーニさんだった。なぜ、そう確信したのでしょう?

赤浦:ポールはマッキンゼーに18年間在籍し、シニア・パートナーとして経験を重ねています。マッキンゼーといえば、世界中の大企業が頼りにする存在です。そこで経験を積んできたポールであれば、投資先の企業がグローバルに事業を広げるうえでの戦略の立て方をはじめ、さまざまな局面で有益なアドバイスをしてくれるだろうと考えました。

広い視野と豊富な経験を持つポールは、私たちとは相互補完関係になりうる。ポールの加入によって、インキュベイトファンドのパートナーシップの総合力は間違いなく向上すると考えました。

私以外の3人のGPに、「パートナー増やすのってどう思う? ポールなんだけど」と相談したら、「いいですね!」とそれぞれコメントしてくれました。4人で議論をした結果、私たち自身のレベルアップのために力を貸してほしいという結論に至り、ポールにオファーをしたんです。

拡大するスタートアップエコシステム。成長の加速に貢献すべく参画を決めた

──オファーをいただいたとき、どのような気持ちになりましたか?

マクナーニ:驚きのあまり、思わず笑ってしまいました(笑)。赤浦さんとは長い付き合いでしたし、インキュベイトファンドの話も聞いていました。いずれ一緒に働けたら非常に面白そうだと感じていたので、最高のサプライズでしたね。

──なぜベンチャーキャピタリストとしてのキャリアを考え始めたのでしょうか?

マクナーニ:日本のスタートアップエコシステムに可能性を感じたことと、赤浦さんとプロジェクトをご一緒するなかで、ベンチャーキャピタリストの存在の大きさを実感したからです。

先ほど、友人が立ち上げた会社に出資をしていた話をしましたよね。ちょうど同じ時期に、本業のリクルートでもベンチャー投資に携わっていました。当時、リクルートが投資をしていた企業は、マネックスやディ・エヌ・エーなど、今や日本を代表するようなメガベンチャーへと成長を遂げました。この変遷を見ていくうちに、スタートアップのように、世の中の流れを捉え、イノベーションを起こそうとする企業こそが、日本の産業を前進させる可能性を秘めているのだと実感しました。

そして、企業の成長の裏にはベンチャーキャピタリストの姿がある。赤浦さんとプロジェクトをご一緒したとき、起業家が直面する困難に対して、精緻に考え抜き、大胆に意思決定していく姿が印象的でした。ベンチャーキャピタリストが起業家のポテンシャルを引き出していくからこそ、企業は大きな進化を遂げられるのだと実感しました。

特に、この20年で起業家やVCの数も増えてきましたよね。スタートアップエコシステムの拡大が見込まれるなかで、自分自身もその渦の中に身を置いていきたいと考えるようになっていったんです。

──もともとの憧れと、時代の流れがピタリと合ったと。

マクナーニ:そうですね。また、4年ほど前に赤浦さんの紹介でLP出資をした時の経験も大きな後押しになりました。出資先は、インキュベイトファンドから独立した木村亮介さんが運営するライフタイムベンチャーズ。月に一度ほど、代表の木村さんとインキュベイトファンドのGP4人と、出資先の選定をするミーティングに参加していました。それがとても面白かったんです。

──どのような点が魅力でしたか?

マクナーニ:マッキンゼーで関わっている大企業とは、事業の作り方が全く違って非常に新鮮でしたね。大企業で新規事業を創出する際には、事業機会や事業戦略など、「成功の鍵がどこにあるのか」を、始めに注視します。一方で、シード期のスタートアップの場合は、起業家自身の人柄や能力、熱量などで投資判断をするんですね。さらに、事業の構想やチームの組成など、全てをゼロから作り上げていくうえでの議論が、マッキンゼーではなかなか経験できないことだったので非常に刺激的でした。

──違う「筋肉」を使う感覚ですね。

マクナーニ:そうですね。もちろん、マッキンゼーでの仕事も非常にやりがいがあり、面白かった。インキュベイトファンドと同じように、とにかくインパクトを出すことを最優先に考え、常に成長させられる場でもあります。その「成長」が自分にとっての大きなモチベーションだった。

でも、50歳を前にして新たな挑戦の舞台を考えた時に浮かんだのが、かつての赤浦さんの姿や、LPとして参画した時の議論の様子でした。赤浦さんに相談してみたらオファーをいただいて、「今こそ参画するタイミングなのかもしれない」と実感しましたね。周囲への影響が大きかったので、即断即決とまではいきませんでしたが、1カ月ほどじっくりと考えた末にベンチャーキャピタリストとしての転身を決めました。

2020年の年末には5人で合宿をし、インキュベイトファンドの方向性を話し合った。

マクナーニの参画によって生じる、人材の流動

──これから、インキュベイトファンドのGPとして多くの起業家に接すると思います。彼らとはどのように向き合っていきたいですか?

マクナーニ:マッキンゼーを通して培った「大局観」と「国際的な人脈」を提供して、事業を進めるための一歩を後押ししていきたいですね。また、会社の規模が大きくなってきた段階での「落とし穴」も多く見てきたので、先回りしてリスクを提示し、それらを回避する策を一緒に考えていくつもりです。

──起業家にとっても、非常に心強いと感じました。

マクナーニ:ありがとうございます。私も赤浦さんと志が似ていて、日本から世界を変えるインパクトを生み出す企業を支援していきたいと考えています。これまで培ってきた知見や人脈を、スタートアップのポテンシャルを引き出すために活用して、産業そのものの発展に貢献していきたいです。

また、私がベンチャーキャピタリストに転身することで、ベンチャーキャピタルで働く人たちのバックグラウンドの「多様化」につなげていきたいと考えています。実は、マッキンゼーのシニア・パートナーからベンチャーキャピタリストへの転身は、世界でもほとんど例がないんです。

──かなり、思い切った決断だったのですね。

マクナーニ:そうですね。

赤浦:私は、ポールがベンチャーキャピタリストになることで、優秀な人材の目もベンチャーキャピタルに集まりやすくなるのではないかと考えています。今は、GAFAMのように、世界を牽引するような企業は、主にアメリカから生まれています。アメリカでは、最も優秀な人材がベンチャーキャピタルに入り、ポテンシャルのある企業へ創業初期から出資している。さらに、経営にもコミットし、グローバルスケールでの成長に伴走しながら産業を発展させてきたんです。私は、この流れを日本でも作り出していきたいと考えています。

マッキンゼーは、日本で最も優秀な学生、人材がキャリアとして着目している企業です。そのなかでも実績が豊富なシニア・パートナーのポールが、ベンチャーキャピタルのパートナーになるという選択は、もっとも優秀な人材がベンチャーキャピタルに集まる起爆剤になると思うんです。

──ベンチャーキャピタル業界全体においても、大きな一歩になりうると。

赤浦:そうですね。また、人材の育成に関しても期待したいですね。ポールは、マッキンゼーでコンサルタントの能力構築プログラムの設計や、実行にも関わっていたそうなので、優秀なキャピタリストを育てていく方法についても、一緒に模索していくつもりです。

ポール:私自身にとっても、ベンチャーキャピタリストの育成は非常にホットなトピックです。マッキンゼーでは、いかにして短期間でビジネスの世界で通用する人材を育てていくのか、試行錯誤してきました。VCの世界でもその法則を編み出していきたいですね。

現状のインキュベイトファンドは、実績のある4人のGPが牽引しています。そのエッセンスを応用させていくことで、50年後、100年後も一流のキャピタリストが産業を生み出し続ける世界を作りたいです。ベンチャー投資が活性化され、スタートアップが勢いを増していけばれば、日本の産業はもっと成長できるはず。今から非常にワクワクしています。



Zero to Impact編集部

寄稿者

VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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