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2023/05/24

「環境問題に興味を持ったのは中学生のとき」 気候変動×テクノロジーで日本を代表する企業を目指すSustineri代表・針生氏とIF代表パートナー和田圭祐が対談- 8 Answers Vol.13 Yosuke Hariu

執筆者:

Zero to Impact編集部

既存の経済・社会の仕組みやルールでは達成できない「インパクト」を創出すべく、課題解決に挑む挑戦者と、彼らに伴走し続けるベンチャーキャピタリストの対談をお届けする「8 Answers」。起業家が社会に残そうとしている価値や情熱を伝えるシリーズだ。

今回は、企業や組織のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を推進するためのサービスを提供しているSustineri株式会社で代表取締役を務める針生洋介氏が登場。企業がオンライン上でで販売している商品やサービスがどれだけ温室効果ガス(GHG)を排出しているかを自動で算定し、さらにカーボンオフセット(GHGの相殺・埋め合わせ)ができるクラウドサービス「カーボンオフセットクラウド」を開発・提供している。2021年9月にはインキュベイトファンドから5,000万円の資金調達を実施したことを発表している。

代表の針生氏は、中学生時代から気候変動に関心を持ち、東北大学大学院で環境経済学と環境科学を研究していた。大学院修了後も気候変動に関する事業に携わるなど、15年以上にわたって、この分野の課題解決に取り組んでいる。インキュベイトファンドで代表パートナーを務める和田圭祐氏は、針生氏の「気候変動領域で日本を代表する企業にしたい」というブレないミッションに共感し、出資を決めたという。もともと自己資金で事業を始めたいと考えていた針生氏がインキュベイトファンドからの出資を受けた背景やSustineriが目指すビジョンなどについて、2人に話を聞いた。

【プロフィール】
Sustineri株式会社 代表取締役 針生洋介(はりう・ようすけ) 氏
環境系シンクタンクにて、気候変動に関する政策立案や実行支援、カーボン・オフセットに関する指針やガイドラインの作成、カーボン・オフセットに関する実施支援に携わる。コンサルティング会社にて、気候変動に関する戦略策定・実行支援、温室効果ガス排出量の算定支援・第三者保証、ESG・SDGs・サステナビリティに関するコンサルティングに従事。プログラミングスクールを卒業後、2021年7月に企業の脱炭素化とサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を支援するサスティネリを設立。

インキュベイトファンド 代表パートナー 和田圭祐(わだ・けいすけ)
2004年フューチャーベンチャーキャピタル入社、ベンチャー投資やM&A アドバイザリー業務、二人組合の組成管理業務に従事。2006年サイバーエージェントへ入社し、国内ベンチャー投資、海外投資ファンド組成業務、海外投資業務に従事。2007年シード期に特化したベンチャーキャピタル、セレネベンチャーパートナーズを独立開業。2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。

日本企業が気候変動対策に消極的なことに対し、危機感を抱いた

――まずは、今までのキャリアと経歴を教えてください。 

針生:中学生のとき、アメリカの作家で海洋生物学者でもあるレイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』を読んで、環境問題に興味を持ちました。人間活動が自然環境を破壊していることに衝撃を受け、人と自然の在り方について考えさせられました。この本に触発されて、持続可能な社会とはどのようなものなのか、どうしたら実現できるのか、などについて考えるようになりました。

環境問題に対する関心は大学生になっても持ち続け、大学では環境問題について考えるサークルにも所属しました。大学院では、環境経済学や環境科学について専攻し、気候変動に関する市場メカニズムや環境経営に関する研究をしました。その後、環境系シンクタンクでは、カーボン・オフセットやオフセット・クレジット制度など、国の気候変動政策の立案や実施、普及啓発等に関わったり、民間のコンサルティングファームで気候変動対策の支援を担当するなど、10年以上にわたって気候変動に関連する業務に携わってきました。

転機が訪れたのは2018年ごろです。海外で、気候変動の課題をテクノロジーで解決する流れが出てきており、さまざまな気候変動関連のスタートアップ企業が誕生しました。ですが、日本ではそういった動きがなかなか生まれず、モヤモヤしていました。そこで、「それならば自分が挑戦してみよう」と思い立ち、起業を決意しました。 

しかし、すぐに起業したのではなく、2020年に退職した後、プログラミングスクールに通いました。自己資金で起業し、サービスの開発も自分自身で行おうと考えていたからです。プログラミングスクール卒業後の2021年にSustineri株式会社を創業しました。

――もともとは自己資金で会社経営をしていく予定だったとのことですが、インキュベイトファンドを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

針生:2021年5月にプログラミングスクールを卒業したタイミングで、Incubate Campに応募しました。起業準備中に情報収集している中で、インキュベイトファンドさんが起業家の育成に力を入れていると知り、将来起業する際は、ここから出資を受けたいなとなんとなく思っていました。ただ、応募した段階では、自分が考えたビジネスアイデアがどの程度通用するのかを知りたい、投資家目線でのアドバイスが欲しいといったことが目的だったため、資金調達についてはあまり考えていませんでした。

Incubate Camp…インキュベイトファンドが開催している資金調達を目指すシード/アーリーステージ起業家のための、1泊2日の起業家/投資家合同経営合宿

――資金調達をしようと思った決め手は何だったのでしょうか。

針生:当時、アソシエイトを務めていた神谷遼多さんから「事業の成長スピードを上げるなら調達をして採用に力を入れたほうがいい」というアドバイスをもらったことです。Incubate Schoolという起業家向けの講座を以前受講したことがあるので、インキュベイトファンドさんは手厚いサポートや投資実績があると分かっていました。だから、もし出資を受けるならぜひインキュベイトファンドさんにお願いしたいと思い、調達の話を進める中で、和田さんを紹介してもらいました

――和田さんはサスティネリの事業内容についてどのような感想を持ったのでしょうか。

和田:サスティネリに出会う前から、脱炭素や気候変動などの分野に取り組むことは、今後の社会では必要不可欠で、課題を解決するにはテクノロジーの力がキーになると考えていました。針生さんが開発しているサービスは、まさに求めているものでした。また、この分野に10年以上携わっていたり、自身でプログラミングを学んだりする姿勢やメンタリティも初対面ときから印象に残りました。

難しいビジネス領域だからこそ、やりがいを感じる

――改めて、サスティネリが開発・提供しているサービスについて詳しく教えてください。

針生:メイン事業は、「カーボンオフセットクラウド」の開発・提供です。弊社が開発したAPIを導入することで、企業がオンライン上で販売している商品やサービスがどれくらい温室効果ガスを排出しているのかを自動で算定し、さらに相殺(カーボン・オフセット)することができるクラウドサービスです。

 ――どのような業種や企業から引き合いが多いのでしょうか。

針生: 交通・運輸業界が現在の主なターゲットで、鉄道会社や旅行代理店、交通サービスの会社などが多いです。出張や旅行、バスツアーの予約やEコマースなどのオンラインサービスで利用していただいています。ただ、オンラインで商品やサービスを販売していいない企業でも、CO2排出量算定に必要な項目を記録したCSVのデータをカーボンオフセットクラウドにアップロードして、排出量を算定し相殺することもできます。

――企業からはどのようなニーズがあるのでしょうか。 

針生:企業の中でも特に大企業は、自社の商品やサービスによる「排出量の見える化(情報開示)」が必須になりつつあります。

今まではコンサルティング会社が企業活動全体のCO2削減を手動でサポートしてきました。カーボンオフセットクラウドの場合は商品やサービス単位で、しかも自動で算定・相殺できるというのは、他社にはない優位性があります。

――2022年5月にβ版の提供を開始して以降、和田さんはどのような手ごたえを感じていますか。

和田:気候変動対策に関するスタートアップ企業の中でも、ユニークなポジションを築いていますよね。現在はウェブサイトで販売している商品やサービスから排出される温室効果ガスを算定・埋め合わせする事業がメインですが、先ほど針生さんが言っていた通り、オンラインのビジネス以外にも応用できるサービスなので、新しい取り組みにも挑戦しやすいですよね。

一方で、気候変動対策に対するサービスは難易度が高いビジネス領域なので、評価されるまで時間はかかると思います。ただ、社会的意義は絶対にありますし、これから多くの企業で求められる内容なので、私もやりがいを感じています。

日ごろから自分たちの行動に影響するCO2排出量を算定 「できることから環境問題を意識する」

 ――サスティネリにはどのようなメンバーが集まっているのでしょうか。また、企業文化についても教えてください。

 針生:現在、従業員は私を含め6人で、少数先鋭の組織です。人数は少ないですが、スタートアップ企業や金融、GHGの算定コンサル出身者など、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。また、複数の専門性を持っているので、いろいろな業務を兼任しています。

和田:針生さんは、起業家としては珍しくギラギラしていないというか(笑)。物腰が柔らかいからこそ、メンバーともフラットな関係性を築いていますよね。

針生:そうですね。まだ創業して2年目なので、事業方針についても十分には固まっていないのが現実です。だから、同じ目線で事業に取り組める環境は経営者としてもありがたいです。また、みんなより良いサービスにしたいという気持ちが強いので、社内でアイディアが飛び交い、建設的なディスカッションができています。

――まだ実績のないスタートアップの創業時は、メンバーを集めるのに苦戦するという意見も多いです。サスティネリはいかがでしたか。

針生:弊社の場合は、求人広告媒体ではなく弊社ホームページの問い合わせフォーム経由で転職希望者から連絡が来ることが多いんです。転職先を探しているというよりは、「気候変動の分野で世の中を変えたい」という事業内容に興味を持って、連絡をいただいています。

――メンバーの皆さんも、生活の中で環境問題を意識しているのでしょうか。

針生:自分たちの日ごろの行動が、地球環境にどれくらい影響を与えているのかを気にするようにしています。例えば、オフィスへの通勤や営業や打ち合わせで移動したときに乗った電車などのCO2排出量を算定し、オフセットしたりしています。今日、この取材を受けるまでの移動に伴うCO2排出量も実質ゼロにしているんですよ。まずは、自分たちからできることをしていきたいと考えています。

ーーありがとうございます。最後に、今後どのような企業や組織にしていきたいと考えていますか。

針生:弊社ではカーボンオフセットを自動化することを直近の目標にしていますが、その先に、気候変動の課題を解決する新しいサービスを開発、提供したいという思いがあります。だから、この分野で新しいことに挑戦したいという思いを持っているメンバーが集まる組織にしたいと考えています。

和田:オンライン診療といえばメドレー、と言われているように、「気候変動対策といえばSustineri」と言われるような、業界でシンボリックなポジションを築いてほしいです。


Sustineri株式会社
代表者名:針生 洋介
会社URL:https://sustineri.co.jp/
採用ページ:https://sustineri.co.jp/recruit/
募集中ポジション:セールス、マーケティング、BizDev、エンジニア など

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Zero to Impact編集部

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VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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