こんにちは、インターン生の内藤です。今回は、ゲストとしてXTech Ventures 西條晋一氏をお招きして2019年1月24日に行われたミートアップイベント「SEED VC Talk Vol.2」の潜入レポートを書かせて頂きたいと思います。
六本木のIncubate Fundオフィスで行われ、当日は大盛況でした!
SEED VC Talkとはインキュベイトファンドが主催するミートアップイベントです。今回の参加対象は、「起業を見据えているが、具体的な準備についてはイメージがついていない」、「たくさんのVCがいるが、自分に合ったキャピタリストが誰かわからない」などの悩みを抱える未来、現在の起業家です。当日は西條さんによる講演のあと、お酒や軽食をつまみながらの懇親会を行いました。
立ち上げた新規事業の黒字化の打率は7割!XTech西條さん
伊藤忠商事からサイバーエージェント、VCを経て現在はXTech、XTech Venturesおよびエキサイトの代表取締役に就任されている西條さん。サイバーエージェントで新規事業立ち上げを担当していた頃は「黒字にするという事だけで言うと打率が7割くらい」、エンジェル投資をやっていたときには「20-30倍のリターンがあった」というくらい、市場と事業の勝ち筋を見極めて、収益性を高めることに長けていらっしゃいます。
西條さんが語る、シード期の資金調達のコツとは?
新規事業の立ち上げ経験が豊富な西條さんは、ご自身の投資スタイルを「知人に紹介された起業家に投資をするインバウンド投資」、「起業家の人間性を見て投資をするスピリチュアル投資」と表現されていました。そんな西條さんが投資を決める際に最も重視するのは、「自分が若手だったら、この人の下で働きたいか?」という、起業家の採用力、とのことです!サイバーエージェントの代表 藤田さんも、起業直後の2-3年、かなりの時間を採用に費やしていて、そのお陰で優秀な人材を揃えることができたそうです。
そんな西條さんが、投資家として起業家の方々にオススメする資金調達方法は、事前にマーケットをリサーチをして、自分の事業に共感して出資してくれそうなVCを見つけること!
VCやキャピタリストにはそれぞれ得意分野と不得意分野があるので、話を持ちかける相手を見極めるのが大切だそうです。
西條さんから見たベンチャー業界:ミドル層こそ起業すべき!
アメリカでは、35歳から45歳の所謂ミドル層が起業をすることは珍しくなく、むしろ身についた経験が有利になることの方が多いそうです。これは、日本のインターネット業界を支える時価総額1,000億円以上の経営者ののほとんどが40代であることからも見て取れます(Yahoo! Japan 川邊社長、ZOZO 前澤社長、GREE田中社長など)。
そんなミドル層が起業する時に大切なのは、「アイデア」と「実行」を分離すること、とのことです。ミドル層のビジネスマンは、豊富な経験から、アイデアの実行は得意なはずなのに、そもそも良いアイデアが浮かばないために上手くいかないというパターンが多いんだそう。二つの役割を分離し、アイデアは得意な人に考えてもらうなど、一人で全部やらずに事業の立上げを進めることが大切です。
現に、サイバーエージェントでは、そんな状況を打破するため「あした会議」という新規事業案のピッチの場では、アイデアと人事案(実行する人)をセットにしてプレゼンするという方式を採用し始めたところ、有望な新規事業が多く出るようになったそうです。
もう一つ、資金を調達する上で大切なのは、投資家を説得しようとするのではなく、投資家に共感してもらうこと!またシード期にはバリュエーションがブレやすいですが、高い評価をしてくれる投資家に飛びつくのではなく、次のラウンドの資金調達を手伝ってくれたり経営相談ができるなど、長期的にみて相互に良い関係性を築くことができそうな人を選ぶのが良いそうです。
西條さんから見たベンチャー業界:成功する起業家の特徴
それはずばり、「その人に合った事業をしているかどうか」だそうです。例えば、西條さんはサイバーエージェント時代、WiL時代にそれぞれ所属するファンドを通じてウノウとメルカリに投資をなさっていますが、「もし山田さん がC向けの技術系のベンチャーではなく、広告代理店を始めるというならば投資はしない。彼の人柄は技術を活かしたC向けビジネスに向いているから」とおっしゃっていました。
流行りの分野やビジネスモデルに合わせるよりも、自分自身のやりたいことや向いていることを深めていく姿勢が大切です。
質疑応答
講演の最後には、Sli.doを使って参加者のみなさんの質問に西條さんが回答してくださりました!
質問と回答は以下の通りです。
ースタートアップスタジオをやっていく上で一番難しかったことは?
2時間の新規事業案ミーティングを週2回行い、毎回アイデアを出し合うという作業を日常業務の傍で行うことは大変だが、それが全体のレベルアップに繋がった。その後事業をローンチ、成果をだすための勝ち筋を見つけることが一番難しい部分。
ーいくつもの事業を黒字化するコツはありますか?
単に黒字化させるという意味では、家計簿感覚で、収入より支出を少なくすることを徹底すれば簡単にできる。インターネット広告代理店やメディア事業など、黒字化している企業が多い分野を選んでいけば、成功確率はどんどん上げられるはず。逆に、世の中にまだないサービスは、当たったら大きいけれども当たらない可能性が大きいから注意が必要。
ー西條さんが起業家に行うサポートはどのようなものですか?
「何もしない」というのが最大のサポートだと思う。自分自身が人に経営にとやかく言われるのが嫌だから、資金調達や顧客紹介など頼まれたら最大限助けるけれど、基本的には放置する。
ー人生の目標は何ですか?
自分らしく楽しく生きること。自分の身近にいる人を幸せにすること。
ーメンターはいますか?
自分の悩みに対して答えを与えてくれるような存在の人はいないけれど、話すたびに自分らしさを取り戻させてくれる人ならいる。人じゃなくても、自分の好きな場所に行ったりして自分らしい状態に持っていくことが大切。
ーフィンテック分野で数十億の資金調達をしている企業の共通点は何だと思いますか?
お金の掛かる事業をやっているということだと思う。
ー西條さんが注目している分野などはありますか?
最近だと、D2C分野で2件、SaaS分野で2件、シェアリング分野で1件投資した。今年はテーマとして、AI系に投資しようと考えている。だいぶAI関連の環境が整ってきて、専門的な知識がない人でもAIを活用した事業を起こせるようになってきていると思うから。
ー起業家に素質は必要だと思いますか?
起業家には、「気がついたら起業していた」というような先天的起業家とそうではない後天的起業家の二種類があって、自分自身としては前者に憧れるけれど、どちらが正しいという訳ではないと思う。必要な素質としては、「やろう」という気持ちと実行力。
ーエキサイトをどのようなプランで再生していきますか?
今のエキサイトの状況としては、約60億円の売上のうち、半分がブロードバンド事業によるもの。残りがニュース、ブログなどのメディア事業と、電話占いを中心とするコンテンツ事業によるもの。現在のメイン事業にまだまだ改善できる部分があるので、そこを修正していく方針。数年後に再上場したいが、東証に対して再上場の意味を示す必要があるので、新たなエクイティストーリーの柱となる事業を立ち上げていく必要があると思う。
ー伊藤忠商事での経験は現在に生きていると思いますか?
スティーブジョブズが「点と点が繋がる」と言ったように、様々なこれまでの経験が今に活きていると思う。例えば伊藤忠で為替ディーラーをやっている時は「起業という視点では何の意味もない」と思っていたけれど、後にFXの事業をやることになったことはその時の経験のお陰。当時は思ってもみなかったことが、年齢や経験を重ねれば重ねるほど点と点が繋がって役に立ってくるのではないか。
ー投資の意思決定プロセスを教えてください
基本的には自分と共同創業者でGPの手嶋で全て決める。どちらか片方がどうしてもやりたいと思った事案に関しては話し合いはしても、ある意味独断で投資することもあるけれど、基本的には相談しながら決めていく。
講演後には、参加者のみなさんと懇親会を行いました。
希望者には、インキュベイトファンドのキャピタリストによる個別の事業相談1on1を実施しました。
最後に(インターン生の感想)
インキュベイトファンドのイベントに潜入させて頂くのは初めてだったのですが、西條さんのお話を伺ったり、イベント後の交流会で起業家さんたちとお話をさせて頂いたりと、非常に勉強になった1日でした!
西條さんのお話の中で一番印象的だったのは、「自分に合った事業をすることが大切」というお言葉です。時間的な余裕という大学生の特権を生かして、自分に合っているのはどういう分野なのか、自分はアイデアを出す側か実行する側かなどを考えていきたいと思いました。
最後に、ここまで読んで頂きありがとうございました!
今後もインキュベイトファンドは企業に関する情報やイベントをどんどん発信・企画していくようですので、ぜひ参加してみてください。