ChatGPTや画像生成AIに代表される「Generative AI」領域の技術発展は目覚ましく、事業への活用方法や周辺の法整備など、あらゆる角度からその可能性についての議論を目にしない日はありません。
「日々の業務はもちろん、既存の事業を大きく前進させる可能性を秘めている技術なのは分かるが、技術に対して理解が追いついていない…」
「一過性の流行りとして終わらせず、技術を活用して本質的かつサステナブルに社会を前に進める事業を生み出したい」
そんな起業家の声を多数聞き、インキュベイトファンドでは、当領域の本流に位置するOpenAI社とパートナーシップを組むマイクロソフト社と共催でGenerative AI領域特化のインキュベーションプログラムを開催いたしました。本記事では、その内容についてレポートさせていただきます!
イベント当日に向けて、起業家とVCが1週間伴走。マイクロソフト社の技術担当やVCの知見を得ながら事業案を磨き込む
プログラムは、Generative AI領域でのアイデアやプロダクトを実際に事業・ビジネスとしての成立を目指すインキュベーションプログラムとして開催。事前に参加者を募集し、VCが個別で採択者の担当につき、1週間伴走して壁打ちを行うMentoring Weekを実施いたしました。
約3週間の募集期間で集まった起業家は80名以上。倍率約10倍の選考を経て、8名の起業家をプログラムに採択させていただきました。マイクロソフト社で顔合わせ兼最初のディスカッションを実施し、ピッチ当日まではオンライン等で議論を継続させていただきました。
起業家、技術者、VC、弁護士…さまざまな立場からGenerative AI領域の現在を語り合う
オープンデー当日は、採択者によるピッチイベントの前に、起業家・技術者・VC・弁護士などさまざまな立場からGenerative AI領域を語り合うパネルディスカッションを用意しました。各領域の最前線を走る専門家による議論は非常に白熱したものとなりました。その内容について、簡単にご紹介させていただきます。
Session1 「Generative AIの全体像」
1つ目のセッションは、日本マイクロソフト株式会社 Cloud Solution Architect 石井峻氏による「Generative AIの全体像」の講義。これまでのAIの歴史から、直近のGenerative AI領域での変化を体系的に理解できる内容でした。また、マイクロソフトにおけるAIへの姿勢や今後のアプローチに関する最新情報もインプットする機会となりました。
Session2 「エンジニアからみたGen-AI領域の技術革新」
2つ目のセッションは、GitHub Japan Customer Success部門 Architect 服部 佑樹氏、株式会社KandaQuantum CEO 元木 大介氏、KaiWaiDAO Founder 新井モノ氏による「エンジニアからみたGen-AI領域の技術革新」についての講義。GenerativeAIの進化を技術観点から理解し、今後の技術的進化や活用法に関して学びました。会場にはエンジニアの方も多くおり、現状の業務にダイレクトに活きる内容となりました。
Session3 「起業家からみた既存事業へのGen-AIの導入」
3つ目のセッションは、HARTi株式会社 CEO 吉田 勇也氏、法律事務所ZeLo・外国法共同事業 弁護士 松田 大輝氏、TimelyHero Eric Wei氏による「起業家からみた既存事業へのGen-AIの導入」についての講義。モデレーターはMicrisoft for Startups Customer Program Manager 藤田 万柚子氏が担当。Generative AIの出現により事業にどのようなインパクトがあったか、既存事業に対してGenerative AIをどのように活用するべきかを学ぶことができる内容でした。参加者のなかには事業会社所属の方も多くおり、自社の事業にどのようにGenerative AIを活用するかを考えている参加者にとって有意義なパネルディスカッションとなりました。
Session4 「起業家からみたGen-AI領域でのサービス創出」
4つ目のセッションは、Stability AI Japan Head Jerry Chi氏、株式会社picon 渋谷 幸人氏、SMITH&VISION株式会社 友塚 壱晶氏による「起業家からみたGen-AI領域でのサービス創出」についての講義。モデレーターはMicrosoft for Startups Customer Program Manager 陳 宇鴻氏です。画像生成のメインストリームを形成するStability AIや、すでに150万ユーザーに到達した「AIチャットくん」を展開する株式会社picon、AIを活用したto B事業を展開するSMITH&VISION株式会社により、さまざまな視点からGenerative AIのサービス創出のヒントをもらえるディスカッションとなりました。事業の話題性だけでなく、サステナブルに事業を成長させるために収益性をどう担保するかなど、同様の課題感を感じているAIスタートアップには非常に有意義なディスカッションとなりました。
Session5 「VCから見たGen-AI領域の事業機会」
最後のセッションは、サイバーエージェントキャピタル シニア・ヴァイス・プレジデント 北尾 崇氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル 野本 遼平氏、ANOBAKA パートナー 萩谷 聡氏による「VCから見たGen-AI領域の事業機会」についての講義。モデレーターは日本マイクロソフト株式会社 コーポレートソリューション統括本部 クラウド事業開発本部長 原 浩二氏です。キャピタリスト目線でのGenerative AIの勃興やスタートアップとしての勝ち筋を理解できる内容でした。登壇者が実際にどのようなユースケースに注目し、投資したいと考えているか、具体的なアイデアまで共有され新規事業を考えているスタートアップにとって有意義な機会となりました。
応募倍率10倍を勝ち抜いた、起業家8名によるプレゼンテーション。審査員からの反応は?
さて、オープンデー後半はいよいよ採択者によるピッチイベントです!審査員は以下の通り。
・「Stability AI Head of Japan」Jerry Chi氏
・「日本マイクロソフト株式会社 コーポレートソリューション統括本部 クラウド事業開発本部長」原 浩二氏
・「インキュベイトファンド株式会社 代表パートナー」和田 圭祐
それぞれ、Generative AIの技術者としての知見や、シードキャピタリストとしての経験を元に事業案についてフィードバックをさせていただきました。当日発表された事業案は以下の通りです。
・「ワークフローの自動化プラットフォーム」発表者:株式会社サンカ 金海寛氏
・「生成AIによる商品写真自動生成・Branding Copilot」発表者:NectAI株式会社 鈴木麟太郎氏
・「商談準備自動化Sales Assistant」発表者:MeeFa株式会社 石渡裕之氏
・「汎用AI人格を活用したAITuber」発表者:SONAE合同会社 中谷太一氏
・「AIを用いた脚本生成によるPodcast制作プラットフォーム」発表者:未設立 細谷海氏
・「SMB向けバックオフィス自動化ツール」発表者:未設立 池田颯氏
・「最先端リアルタイム音声変換」発表者:Parakeet株式会社 上田陽太氏
・「ゲーム向け3Dモデル自動生成」発表者:Assethub株式会社 後藤卓哉氏
審査員からは、「学習コストや推論コストを加味したサービス、システム設計が重要」「事業をサステナブルに推進するうえでデータ活用時などはAIガバナンスの観点も重要になる」といったフィードバックがありました。また、採択起業家からは「1週間のメンタリングで、ピッチのブラッシュアップだけでなく企業としての中長期的な方向性を考える機会となった」「実際にサービスの顧客候補を獲得でき、貴重な機会となった」といった感想をいただくことができました。
いかがでしたでしょうか。
インキュベーションプログラムは無事に閉幕となりましたが、起業家にとってはここからがスタートです。本プログラムを経て、起業家の更なる飛躍の一助になれば幸いです!
また、インキュベイトファンドでは、「事業案を一緒にブラッシュアップしたい」「この領域でなにかやりたいがアイデアが欲しい」という起業家の方をいつでも歓迎しております。Generative-AI領域に限らず、起業についてディスカッション相手が欲しい方は、以下の担当者までいつでもご連絡お待ちしております!
◆運営担当者
インキュベイトファンド 石井 拓人(Twitter:https://twitter.com/h_ttfv)
インキュベイトファンド 鈴木 雄大(Twitter:https://twitter.com/ysuzuki5516)
Microsoft for Startups 陳宇鴻 (Twitter : https://twitter.com/library_02)