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2025/01/29

「眠れる科学技術」を目覚めさせる、新たな挑戦

Tags :

仁木隆大

執筆者:

Zero to Impact編集部

2024年8月、日本のスタートアップシーンに新たなベンチャーキャピタル「アベリアキャピタル」が誕生した。国内潜在科学技術を活用した社会課題解決を目指している。その挑戦の背景には、代表・仁木隆大氏のこれまでのキャリアと情熱がある。今回は、仁木氏にアベリアキャピタル設立の背景から、大学の研究への熱い想いを聞いた。

 

---まず、アベリアキャピタルがどのようなベンチャーキャピタル(VC)なのか教えていただけますか?

仁木:

アベリアキャピタルは、今年(2024年)の8月に設立し、主にシードやプレシード段階、つまり会社が誕生してすぐのタイミングで投資をしています。特徴としては、大学発やディープテック(社会課題を解決して私たちの生活や社会に大きなインパクトを与える科学的な発見や革新的な技術)など、アカデミア発のスタートアップに多く投資している点があります。

会社としても、「日本や世界の潜在的な技術を掘り起こして、社会に還元すること」をビジョンとして持っています。日本の大学の研究室には素晴らしい技術がたくさん眠っています。それを掘り起こし、世の中に出していくお手伝いをしたいと思っています。

 

---「眠っている技術を掘り起こす」とは、具体的にどのようなことでしょうか?

仁木:

例えば、最近投資を決定したものに「生きている肉牛の肉質を予測するAI技術」があります。この技術は30年以上研究されてきたもので、肉牛の状態を正確に把握することができます。どのような牛肉が生産されるのか、健康状態はどうなっているのか、といったことを科学的に解析できる技術なのですが、これを農家や畜産業者にどう届けるか、という課題を抱えて止まっていました。

このように、研究自体は十分に進み、社会的な価値も十分にあるのに、活用されないまま眠っている技術がたくさんあります。私はそうした技術を発掘し、「最後の一歩」を支援して社会に届ける役割を一緒に考え、担いたいと考えています。

投資が決まった、近畿大学松本 和也 教授/分子発生工学研究室の牛肉の肉質を予測する「AIビーフ技術」を用いたビーフソムリエ社

 

---まさに「最後の一歩」で止まってしまっている技術を掘り起こすのがアベリアキャピタルなんですね。ところで、仁木さんがこのような活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

仁木:

もともとは外資系の投資銀行で働いていましたが、その後のキャリアとして「ベンチャーキャピタリストとして特にシードやプレシード期の起業家の皆さんと一緒成長していきたい」という想いが強くなり、インキュベイトファンド(IF)に転職しました。

IFで大学の研究室を訪問する中で、多くの素晴らしい技術に出会いました。日本には研究がたくさんある一方で、それが社会に活かされないまま終わってしまうことも多い。そうした“機会損失”を減らしたいという想いが、アベリアキャピタル設立の背景にあります。

 

---IF時代に、JST(科学技術振興機構)START事業にも関わられたと伺いました。その経験も今に繋がっているのでしょうか?

仁木:

はい、IFに入社して1年ほど経った頃、自ら志願してJSTの「START事業・事業プロモーター」を担当しました。JST START事業は、大学の基礎研究と事業化の間にある「資金の空白」を埋める役割を担うプロジェクトです。

具体的には、「この技術はどうやって社会に還元するのがいいのか」「誰が事業を率いるべきか」「知財をどう整理するのか」といった課題を研究者と議論しながら解決していきました。この経験が、今に繋がっていると言えますね。

 

---そのような経験が、アベリアキャピタルの投資プロセスにも反映されているのですね。具体的な流れを教えていただけますか?

仁木:

基本的には、大学の研究室が保有する知財を活用して株式会社を設立し、その会社に投資を行う形が多いです。ただ、「株式会社化」が目的ではありません。その技術にとって最適な形を模索することを重視しています。

例えば、北海道大学発ベンチャー、株式会社メカノクロスの場合では、最初に研究者と話し始めてから投資実行までに約2年かかりました。その間、研究者や関係者と何度も話し合いを重ね、すべての利害関係者が納得する形を目指しました。

 

---非常に丁寧なプロセスですね。時間がかかる場合も多そうですが、そうしたプロセスを大事にされている理由は何ですか?

仁木:

研究者の想いを尊重することが最も大切だと考えているからです。研究者にとって、その技術は“子ども”のような存在です。それを無理に事業化しようとしても、上手くいきません。研究室に足を運び、直接お話しする中で信頼関係を築くことが、成功の第一歩だと思っています。



---仁木さんが目指す「研究の社会実装」の未来像を教えてください。

仁木:

アメリカでは大学発のディープテック企業が何千億円もの時価総額を持つことが珍しくありません。研究を続けることで正当な対価が得られ、研究者が夢を持ち続けられる環境が整っています。日本でも、そういった仕組みを作りたいです。研究が評価され、研究者が正当な地位や対価を得られるようになれば、日本の技術力はさらに高まり、国際競争力も増していくと信じています。



---投資スタンスとして大事にされていることを詳しく教えていただけますか?

仁木:

私が特に大切にしているのは、「誰かのためになる投資」をすることです。ただお金を投資して、収益回収するだけの投資では意味がありません。その投資が新たな価値を生み出し、次の何かに繋がるものでなければならないと思っています。

例えば、私たちが関わることで会社が成長し、その結果として社会に新しい価値が生まれる。それが次の可能性を切り拓くきっかけになる。そんな形を目指しています。「投資が次の何かに繋がるものであることが重要。それが会社の成長にも、自分たちのリターンにも繋がる」と考えています。

 

---単なる利益追求ではなく、投資が次に繋がる仕組みを作るということですね。それはアベリアキャピタルならではの視点だと思います。

仁木:

そうですね。スタートアップへの投資は、単なる収益の話ではなく、社会を良くするための一歩だと信じています。その中で、私たちが果たす役割がある。

 

---ありがとうございました!アベリアキャピタルの挑戦が、日本の研究や社会に大きな未来をもたらすことを期待しています。

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VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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