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2020/07/20

スタートアップ資金調達の基礎 Vol.2 スモールビジネスとスタートアップの違いとは?

執筆者:

Zero to Impact編集部

スモールビジネスとスタートアップの違いについて考えたことがありますか?両者に優劣があるわけではなく、どちらを志向するかによって全く異なる経営をしていくことになり、必要な覚悟も違ってきます。今回はこのスモールビジネスとスタートアップの違いについてと、スタートアップを志向するのであれば必須とも言えるVCからの資金調達を行うにあたって考えておくべきことについて解説します。

※本記事は、インキュベイトファンドが主催する起業家むけ勉強会「Incubate School」の内容を記事化したものです。インキュベイトファンドが主催する勉強会に興味がある方は、ぜひメールマガジンに登録してイベント開催情報を受け取ってください。

資金調達の基礎(4) スモールビジネスとスタートアップの違いとは?

スモールビジネスとスタートアップは、新たに事業を立ち上げるという点では共通していますが、経営上全く異なる性質を持っています。どちらが良い、悪いというわけではなく、自分たちのビジネスはどちらを志向するべきか、慎重に判断する必要があります。この記事を読んでいるのはスタートアップを志向している方が多いと思いますが、自分たちのビジネスはエクイティファイナンスに向いているかどうか、今一度見直してみると良いと思います。

実現したい世界と、そこに至る成長スピード

それでは、スモールビジネスとスタートアップの違いについて説明していきたいと思います。スモールビジネスとスタートアップの一つ目の大きな違いは、実現したい世界と、そこに至る成長スピードです。

スモールビジネスの場合は、Day1から今できることで事業を運営し、1年目など早い段階で黒字化してキャッシュフローを生み出していくということが強く求められます。ですから、スモールビジネスでは堅実に利益を出していけるビジネスモデルを考えていくことになります。

一方でスタートアップは足元のマネタイズに関しては一切考えなくていいということが大きな特徴として挙げられます。創業から数年経過して事業規模が大きくなればキャッシュフローを考えていく必要が出てきますが、シード段階においては足元のマネタイズはひとまず置いておきます。まずはスタートアップとしてどんな世界を実現したいのか構想し、その世界に向けて最短距離を目指していくことを考える必要があります。その上で、ユーザー数などををKPIとしてプロダクトやユーザーベースに対して赤字を掘りながらも投資をし続けるのがスタートアップのやり方です。

つまり、スモールビジネスが1年目から利益を上げていくようなアプローチであるのに対し、スタートアップは5年〜10年後に黒字転換して、壮大なビジネスへと成長してやがて大きな利益を得ていくようなチャレンジである必要があります。

売上・利益成長モデル

二つ目の違いが、売上・利益成長モデルにあります。つまり、スモールビジネスとスタートアップはビジネスモデルから大きく異なり、志向する成長のスピードや安定性が違っているということになります。

スモールビジネスは創業すぐから黒字化し、生み出した利益を再投資しながら徐々に規模を拡大していくことによって一次関数的な安定成長を継続していくことを志向してビジネスモデルを設計します。

一方でスタートアップは二次関数的な成長を目指すという点が、スモールビジネスとの大きな違いと言えます。スタートアップの場合、例えば利用者の増加がそのプラットフォームにネットワーク効果を呼び起こして利用者が利用者を呼び、その結果として成長がさらに加速するというようなことが、サービス開始後すぐではなくともどこかのタイミングで起こってくるような事業展開が考えられます。もしくは、一段目のビジネスが成功したらそこで得られたデータをもとに副次的なマネタイズの手段を得られるようになっていく、そうしてマネタイズ手段が段階的に増えていくことで成長スピードが上がっていき、大きな成長を目指していくのがスタートアップとしてのあり方です。

Exitを目指すか、否か

三つ目の違いとしては、イグジットを目指すか否かという点があります。

スモールビジネスの場合、イグジットに対する外的な圧力が存在しないため、継続的に起業家が志向するペースで事業運営ができます。

一方スタートアップの場合は、外部の株主に対して上場やM&Aなど何らかのイグジットの機会を提供していく必要があります。そして、投資契約にはイグジットへの強制力となるような条項が含まれることが多いです。特にVCファンドには償還期限が存在するため、VCは投資先企業がリビングデッド(会社としてはつぶれていないが、スタートアップとしての成長曲線が見込みづらい)状態になってしまった場合に備えて例えば株式買取を請求できる条項を付けていたり、このような条件の相手が出てきた際は前向きにM&Aを検討するというような条項をつけたりすることで、何らかのかたちでのイグジットを達成できるようにしています。VCファンドもLPから資金を集めて成立しており、償還期限内に投資回収する必要があるため、イグジットへの圧力は性質上避けられないものと言えます。

起業家が報われるまでにかかる時間

四つ目の違いとして、これはある意味起業家にとって一番大きな問題ですが、起業家が報われる時期が大きく異なります。

スモールビジネスの場合は、初年度から事業運営による大きなキャッシュインが期待できて黒字化も達成できている場合が多いため、そのキャッシュインを会社の経費や高い役員報酬などの様々な方法で自分に報いるために使うことができます。

一方でスタートアップに関しては黒字化まで時間がかかる上、利益はできるだけ再投資に回していくため、給料を上げたり経費を使ったりということはほぼできません。そういった目先のことにお金を使うのではなく、使える資金がある限り成長に使うというのがスタートアップとしての姿勢になります。実質的に起業家が報われるのは、M&Aや上場後に保有株式を売却するタイミングです。

資金調達の基礎(5) スタートアップが考えるべき、VCに刺さるテーマ・プランとは?

それでは、エクイティファイナンスで資金調達を行いスタートアップとして志向していく上で、VCが求めるテーマやプランとはどのようなものなのでしょうか?ここからは、インキュベイトファンドGPの村田とアソシエイト種市が投資先の選定基準として考えていることを4つ紹介します。

MarketとPainが大きいか

一つ目がMarket(トライするテーマ)とPain(解決すべき課題)の大きさです。まず、非効率や不自由な状態、よくこの課題のことをペインといいますが、大きなペインが顕在化している領域での問題解決をテーマとすることが重要です。そして、ペインに対する何らかの解決策が求められている状態、しかもその解決策がまだ誰も提示できていない状況であることが望ましいです。

このようにペインが大きい、かつ未解決の状況に対してそのスタートアップが考案した解決策がもたらされたとき、ペインを感じていた人たちにとってその解決策がNice to Have(あったらいいね)ではなく、Must Have(絶対に導入する)であると確信できることも投資判断の鍵になります。お金に余裕があったら導入しようというような話ではなく、この解決策が提供されたら必ず導入するというほどに大きなペインが存在するマーケットを選定していることが重要です。

MarketとFounder/Teamがフィットしているか

二つ目に、Market(トライするテーマ)とFounder/Team(誰がやるのか)のフィット感を重視します。やはり、起業家自身が歩んできた独自のバックグラウンドを活かした、自分だからこそできる、自分しかいないという必然性の高いテーマ選定はキャピタリストにとっても魅力的に映ります。

また、多くの企業を同時並行的に見てきた経験のあるキャピタリストですら知り得ないような業界における市場仮説を持っている起業家はとても強いです。自分だからこそ実現できる解決策を持っていることや、業界内部に深く入り込んだ経験があるからこそ新たなビジネスでもその業界に深く入り込んでいけるなどといった、他者が取り組むよりも自分が取り組むことによって成功確率が上がる要因が存在し、独自の強みを発揮できる領域で起業する起業家は、キャピタリストとしてもぜひ投資したい相手になります。

Problem-Solution Fitに対する初期的な検証ができているか

三つ目としては、Problem-Solution Fitに対する初期的な検証ができていることが望ましいです。言い換えれば、ペインに対して起業家が考案したプロダクトやサービスが効果的であること、また強いニーズが存在していることを示せることが大切ということです。

考案した解決策が実際に提供されたら多くの人がMust Haveで導入するということを、私費で非常にスモールで構わないので検証して良い結果が得られていると、それは投資の意思決定を大きく後押しする要因になります。例えばランディングページを作ってそこに流入をしてきたユーザーが本当に欲しいと言うかどうか、あるいは先行的にアプライしてくれる人がどれだけの数いるのかというような検証の結果を得られていれば、キャピタリストとしても判断をしやすく、起業家自身がこれだけ本気なのだという意思表示にもなります。

 

ただし、仮にこのような初期的な検証ができていなかったとしても、キャピタリストが強く共感・納得できる精度の高い仮説が構築できていれば、投資に踏み切ることは十分可能です。キャピタリスト自身の市場に対する課題意識と一致したり、これこそ市場が求めているものだと納得できたりという精度の高い仮説が構築できている段階であれば、検証段階を飛ばして投資判断が行われるケースも少なくありません。

Problem-Solution Fitに関する精度の高い仮説が構築できていたスタートアップは、Incubate Camp(※インキュベイトファンドが主催する、本気で資金調達を目指すシード/アーリーステージ起業家のための、1泊2日の起業家/投資家合同経営合宿)でも実際に優勝しています。インキュベイトキャンプでそのスタートアップはプロダクトのデモを流したのですが、精度の高い仮説を表現し他の人たちに納得してもらうために、このデモは非常に有効でした。このプロダクトがあったら絶対に欲しいと感じさせ、これこそ市場が求めているものだという共感を得て理解してもらうために使ったこのデモが刺さったことが、優勝の要因としても大きかったと考えられます。

次回調達時までに達成するべきマイルストーンと必要金額が明確か

四つ目に、次回調達時までに達成するべきマイルストーンが明確であることと、そのためにいくら必要かの計画が立っていることが重要です。スタートアップにはどんな世界を実現したいかという壮大な目標を掲げますが、ではこの壮大な目標を実現するためにはトータルでいくらかかるのかという点をまず明確にすることと、その上でシードラウンドから次のシリーズAに移行するまでに何を達成している必要があるのかの計画を定める必要があります。何をKPIとして目標設定し、そのフェーズでの目標達成のためにシードラウンドではどれだけの金額が必要か明確化されていることで、VCは次のフェーズの投資家へのバトンタッチや追加の投資を想定した上で投資判断しやすくなります。

近年黒字化しない大型ユニコーンが増えていることを踏まえると、ベストケースな調達がなければ全く成立しないプランではなく、調達額の範囲内で実現したプロダクトでベターケースのマネタイズができるような柔軟性のある計画を立てていた方が良いと考えられます。そうすることで、シードの段階でこの程度の金額なら出せるのにというVCからも投資が受けやすくなります。

まとめ

・起業にあたってスモールビジネスとスタートアップのどちらを志向するかは慎重に考えるべき

・勝負する市場のペインが大きいか、なぜ自分が取り組むべきなのかをよく考えることが重要

・精度の高い仮説と計画を立てることがVCの投資判断の鍵になる

Zero to Impact編集部

寄稿者

VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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