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2021/07/30

創業期を共に創り徹底的な“伴走”スタイルを貫く、ゼロイチキャピタル種市氏の挑戦

創業前後の起業家にとって、この時期に良き仲間と出会って共に走り出せるかどうかは非常に重要だ。創業初期の仲間は、孤独に茨の道を進む起業家にとって、大きな戦力であると同時に相談相手や心の支えでもある。そして、ベンチャーキャピタリストでありながら、創業メンバーの一人と言ってもおかしくないほど強いコミットメントで起業家を支えるのが、元インキュベイトファンド アソシエイトの種市 亮氏だ。同氏は、2021年6月1日に独立してゼロイチキャピタルを設立した。

ゼロイチキャピタルは、創業期のファーストラウンドに特化したシードVCだ。種市氏の支援スタイルの特徴は、真の伴走者となることにこだわり、泥臭く自らが共に事業を立ち上げる戦力となる徹底的なハンズオンへの姿勢にある。同氏はゼロイチキャピタルからの出資を受けることについて、「創業者が一人増えると思ってほしい。それぐらいのコミットメントで伴走する。」と語る。

“Create and Accelerate ZERO-ICHI Startups”を投資ポリシーに掲げて新たなスタートを切った種市氏に、ゼロイチキャピタルならではの強みや、起業家と伴走することで成し遂げたい未来を聞いた。

【プロフィール】

ゼロイチキャピタル 代表パートナー 
種市 亮 氏
2011年10月楽天株式会社に入社。
名古屋支社にて4年間楽天市場出店企業のコンサルティング業務に従事後、金沢支社の責任者を経験。2016年10月インベストメントカンパニーに異動。
新設のCVC部門である楽天キャピタルの立ち上げに従事。1年半で2社に投資実行し、投資先のEC・デジタルマーケティングの仕組みづくりに関するハンズオン支援を経験。
2018年4月独立系ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドへ参画。
アソシエイトとしてパートナー村田 祐介と共に新規投資テーマの検討、起業家発掘、既存投資先の支援、ファンドマネジメント、ファンドレイズ等幅広い業務に従事。
2020年4月日本最大級の起業家・投資家の合同経営合宿型ファイナンスプログラムIncubateCamp 13thの主将としてイベントの企画・集客・運営を行ない、過去最大の応募人数を記録。
2021年6月にシードステージのスタートアップを支援する独立系ベンチャーキャピタルのゼロイチキャピタルを設立し代表パートナーに就任。

「Deeptech」と「コマース」の強みを生かし、一緒に事業を創る覚悟で起業家をサポート

──本日はよろしくお願いします。始めに、ゼロイチキャピタルがどんなベンチャーキャピタルなのか教えていただけますか?

種市:ゼロイチキャピタルは、スタートアップのファーストラウンドに特化して投資を行う独立系ベンチャーキャピタルです。起業家にとっての最初の伴走者として、起業前相談・アイディエーション・事業プラン立案・設立手続き・チームアップ・ファイナンス等多岐にわたるサポートを行います。サポートを通して、シリーズAラウンドへの早期到達、そしてその先の成長軌道に乗せることを目指します。

──どのような方針で投資を行っていくのでしょうか?

種市:ゼロイチキャピタルは、“Create and Accelerate ZERO-ICHI Startups”を投資ポリシーに掲げています。ここに込めた意図は二つあります。一つは、ゼロイチの創業期に特化して、他のVC以上に濃く伴走するという意思表明です。シードステージにおいては、調達資金を使っていかに仮説検証し、早期に次のシリーズAラウンド資金調達につなげられるかが重要です。僕はその部分で徹底的に伴走し、次のシリーズAラウンドのリード投資家を責任持って連れてきたいと考えています。

意図の二つ目は、「Create」という言葉をあえて用いることで、自分も一緒に事業を創っていくのだという決意を表現しています。もちろん主役は起業家であるのが前提ですが、自分も強いコミットメントを持って共にゼロイチを作っていきたいです。

──どういった領域でチャレンジする起業家に投資したいですか?

種市:重点投資領域としては、E-Commerce、Entertainment、Digital Health、Industry Dx、DeepTechを挙げています。その中でも、研究開発型スタートアップをアカデミアの先端研究から仕掛けていくことと、コマースのノウハウを他領域と掛け合わせて事業成長を加速させることに注力していきます。

──なぜその領域に力を入れるんですか?

種市:Deeptech領域には、アカデミアで生まれた知財を活用するための仕組みが整っていない現状があります。そのため、論文ベースでは世界的な最先端の競争力が認められている知財が、社会実装に至らず塩漬けになってしまっています。アカデミアが知財の社会実装に動くには、大学や研究者に十分で魅力的な対価がもたらされることと、プロダクトの開発・販売をビジネスとして成立させられる経営人材とのマッチングが必要です。

──なぜそう考えるようになったのか、具体的な事例などがあれば教えていただきたいです。

種市:私がインキュベイトファンドのアソシエイトとして関わらせていただいて、アカデミアの研究成果を理想的な形で社会実装できた例が、インキュベイトファンド支援先の「Pale Blue」と「Pixie Dust Technologies」です。

「Pale Blue」は、東京大学の中でも超小型衛星の開発で世界の最先端を走る、小泉研究室の卒業生が中心となって設立したスタートアップです。小泉研の小泉准教授がCTOとして参画し、アカデミアとスタートアップの橋渡しや、イノベーションが継続的に生まれやすい土壌づくりをしていただいています。研究者の方々にとってスタートアップはまだ主流の選択肢ではないので、小泉准教授のようにアカデミアで立場のある方がスタートアップに参画することで、研究者のキャリアの新たなロールモデルになっています。

「Pixie Dust Technologies」は、音や光を活用したインタフェース技術を用いて、計算機とヒトあるいはモノの最適な関係性を形作るための研究開発を行うスタートアップです。当社は、筑波大学の落合陽一准教授が主宰するデジタルネイチャー研究室で生まれた知財がピクシーダストに帰属する代わりに、大学にピクシーダストの新株予約権が付与されるスキームを活用しています。こうすることで、大学・スタートアップ間で知財とエクイティが循環する仕組みができ、大学が知財の対価を十分に得られると同時に、世界的競争力のあるプロダクトを社会実装できます。

以上のスタートアップを支援した経験を生かして、今後は東京大学・筑波大学だけでなくさまざまな大学と連携し、研究成果を社会実装したい研究者に対して適切な情報と仕組み、そして経営者として適切な人材とのマッチングを提供したいと考えています。

──アカデミアとスタートアップの間の情報の分断が解消されれば、海外でも通用するプロダクトが日本からもっと生まれてくる可能性がありますね。コマースの方はいかがでしょうか?

種市:楽天でのECコンサルタントとインキュベイトファンドでの支援の経験から、コマースのノウハウは比較的多く持っており、同時に既存プラットフォームにコマースの要素を掛け合わせることで生まれるインパクトも実感しています。コマース以外の領域にコマースのエッセンスを加えて成長ドライバーとすることに成功した例として、インキュベイトファンド支援先のオンライン薬局「ミナカラ」があります。僕が関わり始めた当時「ミナカラ」はメディア事業のみでしたが、伴走の過程でコマースを掛け合わせた事業モデルに進化し、一気に収益化していく様子を一緒に見てきました。こういった経験に基づいて、今後支援させていただくスタートアップの可能性も引き出していきたいと思います。

「伴走者」として、同じ方向を向いて共に戦う支援スタイル

──種市さんの投資・成長支援スタイルを語る上では「伴走者」がキーワードになると思うのですが、その原点はどこにありますか?

種市:「伴走者」の仕事に惹かれた最初の経験は、楽天のECコンサルタント時代です。中小企業にとって社運をかけた新規事業であるEC事業の成功のために、リアルタイムでデータを追いながら売り上げ向上の施策を考えるなど経営者の方々と徹底的に伴走する中で、外部の人間としては最も近い特等席でチャレンジを共にできることにやりがいを感じました。

──ECコンサルタントを経験された後、楽天CVCの創立メンバーとしてゼロから立ち上げを行なったと伺っていますが、どのような経緯でキャピタリストに転身されたんですか?

種市:経営者の方々ともっと深く同じ方向を向いて伴走したいと感じつつある中で、楽天CVC部門の立ち上げメンバーへのアサインがありました。ベンチャーキャピタルについて知識が全くない状態から勉強しながらCVCを立ち上げていくうちに、金銭的リスクを共に負うキャピタリストなら起業家と全く同じ方向を向けるのではないか、本当の意味で伴走者になれるのではないかと思うようになりました。

──楽天CVCの立ち上げ後、インキュベイトファンドに転職された経緯を教えていただけますか?

種市:楽天CVCでは楽天の事業やアセットとの相乗効果が期待できる一方で、事業会社のCVCである限りは事業会社の全社戦略次第でファンドとしての戦略やバジェットが大きく変わってしまいます。徹底的に起業家と伴走したい自分としては、キャピタリストとして何十年かけて起業家と伴走するのが難しく、自分がキャリアを積んでいきたい方向性とは異なると感じました。

本当に伴走できる環境はどこなのか探した結果、インキュベイトファンドにたどり着きました。インキュベイトファンドは、起業準備中の起業家とディスカッションを繰り返し、ゼロから事業構想していくスタイルをとっています。そうすることで、起業家と100%のシンクロ率で同じ方向を向くことができます。

インキュベイトファンドでは村田さんに付いて3年間修行し、多くを学ばせていただきました。起業家と方向性がシンクロしていることで、なんでもやる、徹底的な伴走スタイルが可能になっているのを実感できました。

高いリスクをあえて取り、新たな産業となりうる大きなテーマに挑戦

──インキュベイトファンド時代の学びを経て、どのような起業家に投資したいと考えていますかか?

種市:起業家にとってはイノベーターとアントレプレナーの二つの特性が大切だと思っています。イノベーターの性質を持つ人とは、先端の研究をしている人や、業界での経験が豊富で産業構造の理解があり、そこに対して忸怩たる思いがあって産業自体を変えていく意思と仮説を持っている人です。アントレプレナーの性質があるのは、描いた青写真を実現していくための柔軟性や意思決定の速さがあり、人を惹きつけてチームを引っ張っていける人です。

どちらの素養もある人はすごく少ないので、僕はイノベーターとアントレプレナーを引き合わせて最適なチームを作るのが有効だと考えています。自分がチームアップのハブになることで、起業家として戦っていける人と成功しうるスタートアップを増やしていきたいです。

──ベンチャーキャピタリストとしてスタートアップに投資をすることで、どのような社会的インパクトを残していきたいですか?

種市:PEや銀行ではできない、リスクは高いが成立すれば新産業になりうる大きなテーマにチャレンジしていきたいです。近年スタートアップの中でも手堅いテーマに対しては、機関投資家やPEの出資を始めとして、ファイナンスの手段の種類が増えてきています。VCの投資は、まだ仮説が証明できていないが本当に社会に求められている大きなチャレンジに対してリスクを取って行われるべきだと思っています。世界に先駆けて日本から新しい産業を作っていくためには大きな資金が必要なので、その最初の一歩をゼロイチキャピタルが支えたいです。

──ありがとうございました。

上原 晶

寄稿者

慶應義塾大学商学部に在学中。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」のインターン生として、リサーチ業務などを担当しています。中国語を学習しており、中国スタートアップに興味があります。大学卒業後はベンチャーキャピタリストとして、起業家と伴走していきたいと考えています。

慶應義塾大学商学部に在学中。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」のインターン生として、リサーチ業務などを担当しています。中国語を学習しており、中国スタートアップに興味があります。大学卒業後はベンチャーキャピタリストとして、起業家と伴走していきたいと考えています。

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