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2023/11/14

ファンドもインキュベートする――、GP育成が目的のインキュベイトファンドでの富永の挑戦【IFアナリストインタビュー Vol.1】

執筆者:

Zero to Impact編集部

インキュベイトファンド(以下、IF)では、「ゼロイチ期のスタートアップへの投資・育成ができるジェネラル・パートナーを日本で増やしたい」という思いの元、ベンチャーキャピタル業界としては初めて、独立を前提とした新卒採用を行っている。2021年に入社した4名の新卒1期生を皮切りに、2022年には5名の2期生が、そして2023年には4名の3期生が入社した。少しずつ「新卒でベンチャーキャピタルに入社する」という選択肢が浸透してきたものの、その実態については明らかになっていない部分が多い。

そこで、本シリーズではIFに新卒入社後、事業開発アナリストとして業務に従事するメンバーに入社の思いや業務内容について聞いた。第一弾は、東京大学獣医学専修出身の富永のインタビューだ。

【プロフィール】
富永晃世(とみなが・こうよう)
東京大学獣医学専修にて、外科研究室の一員として機械学習を用いた周術期疼痛評価の研究に携わる。獣医師やエンジニアからなるチームを立ち上げ、各種受賞。学生時代は競技ダンスで全国大会優勝を経験。2021年 インキュベイトファンド参画。事業開発アナリストとして新規投資先の発掘に従事。DVM(獣医師)

独立前提の人材育成、リレーションがVC新卒の強み

――新卒1期生として入社して3年が経ちますが、現在のお仕事を一言でいうと?

富永:起業家と一緒に事業を考える仕事です。インキュベイトファンドが打ち出しているそのままですが、起業家と一緒に事業をつくって、汗をかく仕事です。つまり、起業家の横にいて何でもやる人だと言えます。

――入社してからこれまで、どのような仕事をしてきましたか?

富永:振り返ると1年目、2年目、3年目それぞれ違うフェーズだったと思います。1年目はとにかく人に会って、自分の目を養う時間でした。たくさんの起業家に会う中で、その人自身が持つスキルなどを観察して基準をつくっていくフェーズでしたね。

2年目は、その基準をもとに案件化して、ソーシングを結果に結びつける時期でした。具体的に言うと、投資の細かい話まで対応しました。1年目との違いは、ただ人に会うだけではなく、パートナーファンドのGP(無限責任組合員)と共に案件を成立させる力を培った時期でした。3年目は、成立した案件に対してサポートする力を養う時期になりました。

1年目、2年目はアナリストの一面を持ちつつ、起業家と一緒にゼロイチを立ち上げましたが、3年目に入ってインキュベイトファンドのミドルオフィスとバックオフィスを半年ごとにローテーションしています。ミドルバックの専門家になるわけではなく、将来、自分が独立するために共通言語を身につける時期だと思っています。

※ソーシング…「自社の希望の条件に合う候補企業を見つけ、交渉を進めていくプロセス」を意味する。

――富永さんは今後アソシエイトにステップアップしていきますが、その後は中途採用の方と同じく独立を目指していくのでしょうか。

富永:前提は同じだと思います。やるべき業務は変わりませんが、既存投資先への支援がより求められるのではないでしょうか。また、これまでの3年でアナリストの経験を積んだ強みもあると考えています。クロージングはGPがするものではありますが、「どうしたら投資を受けられるのか」を起業家と膝を突き合わせて議論を重ねてきたアナリストを経た人間だからこそ、起業家とGPの間に入り巻き取れる部分は多分にあると見ています。

投資を含め、新規のクロージングのサポートや起業家とのリレーションを強固にする部分は、アナリストを経たアソシエイトに求められそうだと感じています。

――GPが思い描く新規案件の発掘を共にできるのは、アナリストを経たアソシエイトの強みになりそうですね。

富永:そうですね。強みになるのは実務を巻き取ること以上に、他と深くリレーションするところですかね。そこが、これまで一番に培ってきた力です。GPと起業家の間に入って交通整理をするというか、GPや起業家が動きやすくするためのリレーションをとれたら理想的だと思います。

――これまでGPとして独立することを前提に、横断的な知識を学んだり経験を積んだりしていますよね。

富永:そうですね。独立後のGPは、基本的に必要な知識を自分で身につけていかなければなりません。今の段階では、独立してどの知識がどのように使えるのか分かりませんが、とりあえず体験したり身につけたりできるのは大きなメリットだと思っています。

例えば、今すぐPRやファンド組成の知識が使えるわけではないのですが、「あのときあれやったな」と進研ゼミのように先取りして学べるのは、いいですよね。

独立して経験をそのまま使うというよりは、それを種にして思考の幅を広げられるのではないかと思っています。独立したGPは、自分でいい機会を見つけて物にする過程にハードルがあると思うのですが、インキュベイトファンドでは、そこの厚みをつけられている気がします。

――最近は、他社もベンチャーキャピタルで新卒採用を始めています。他社との差別化は、どういった部分にあるのでしょうか?

富永:インキュベイトファンドはGPを育成することを目的としているので、どのベンチャーキャピタルよりも育成に本気です。育成対象がファンド戦略に組み込まれているのはインキュベイトファンドだけではないでしょうか。うちは上層部が必死に育成しようとしています。

――将来のGP候補として、出資する対象として人材を育てているということですね。

富永:はい、そう感じています。起業家だけではなくて、ファンドもインキュベートするのがインキュベイトファンドだという捉え方もできますね。

何でもトライできる環境、求められるのは自主性

――インキュベイトファンドに入社を決めた経緯を教えてください。

富永:まず友達の考えを聞いたら「外コン・外銀だ」と言われたのでコンサルなども見ていたのですが、コンサルは自分に合っていないと感じました。一番魅力に感じた商社を中心に就活をしていたのですが、内定の前にインキュベイトファンドの赤浦さんを知って、結果的にインキュベイトファンドを選びました。

インキュベイトファンドがベンチャーキャピタルだったことが興味を惹かれた一番のきっかけです。もともとスタートアップに興味があって、ビジネスコンテストに出て事業アイディアを考えていたりしました。

――ベンチャーキャピタルに興味を持ったのは、なぜですか?

富永:インターンした会社の副社長の活躍を見て、ベンチャーやベンチャーキャピタルへの憧れが強くなりました。インターン先は、MICIN(マイシン)という遠隔診療で有名な業界2位の会社です。その副社長は、マッキンゼーからベンチャーに来た人でした。

僕は当時、ベンチャーキャピタルを胡散臭い存在だと思っていました。しかし、実際に現場を見たことで、印象がガラッと変わったんです。ベンチャーはノリと勢いで動くと思っていたのですが、そうではなく、極めて優秀な人たちが熱量高くビジョンを掲げ緻密なオペレーションを作っていくことで成立することを知りました。数多くのスタートアップと関わることができる点、ベンチャーキャピタルへの憧れが強くなった理由は、そこにあるのかもしれません。

――新卒1期生なので情報が少なかったと思うのですが、インキュベイトファンドはどのように見つけたのでしょうか?

富永:『外資就活ドットコム』に出ていた広告で見つけました。最初の印象は「面白い企業だな」という感じでした。説明会に参加した後、壁谷さんからスカウトが来て、合いそうだと感じたのと求められていそうだったので、いいなと思いました。

――入社を決めるとき、迷いはありませんでしたか?

富永:正直すごく迷いました。当時は新卒でベンチャーキャピタルというイメージがなく、前例もありませんでした。商社を経てベンチャーキャピタルに移る手段もあるとは考えていましたね。インキュベイトファンドへの入社を決めた後に迷いはなかったのですが、決まってから真剣に調べました。日本経済新聞にインキュベイトファンドの記事が出ているのを見て、安心したのを覚えています。

――入社して見えたインキュベイトファンドの内情は、いかがでしたか。

富永:入社前は業務イメージが漠然としていて不安に思う部分もあったのですが、良い意味で裏切られました。まず、研修があったので嬉しかったです。金融色が強そうだと予想していたので、それこそIBD(投資銀行部門)のように激務なのだろうと思っていました。

――深夜までExcelを叩くイメージだったということですか?

富永:そうなんですよ。任される範囲が限定的なのではないかとで怖かったのですが、そういったことは一切無く、意外に任せてもらえる部分が多くて安心しました。

インキュベイトファンドには、自分で考えて何でも自由にやっていいという社風があります。よくサンドボックスと言いますが、そういった何でも試せるイメージに近いと思います。案件につながるなら、何でもトライしていい環境です。今まで7件の案件が成立(2023年10月時点)しているのですが、その中で試せることは全部試せたと思います。

例えば今、僕はパートナーファンドにtoCのサービスへ投資してもらいたくて動いています。インターン時代はtoCに触れる機会が全くありませんでした。そういうことも自分で決めていいんです。
※サンドボックス…直訳すると「砂場」。 翻って実験場の意。

――リスクがあるとしたら、どういった側面になるでしょうか。

富永:インキュベイトファンドは裁量権のある環境だと思います。新卒に対して、ここまで高い裁量権がある会社は他にないと言えるほどです。それが良くも悪くもすべて自分に跳ね返ってくるので、それが楽しいと思えるかどうかが重要です。楽しいと思えなければ、しんどいだけだと思います。

――富永さんはやりたいことが明確なので自由度のある環境を活かせていますが、進みたい道が定まっていない人でも活躍できるのでしょうか。

富永:どうでしょうか。でも、やりたいことは明確に持っているほうがいい気はしますね。それから、困ったときにどうすればいいのかを誰かに聞ける人がいいのではないでしょうか。

確実に向いているのは、人とコミュニケーションをするのが好きな人ですね。自分で仕事を生み出す必要があるので、場合によってはやることが分からなく悩む人もいるかもしれません。そのときに「困っているんですよね。ハハハ」と開き直って相談できる人のほうが向いていると思います。

また、使える道具が多くある環境なので「インキュベイトファンドの方向とアライアンスさせるには、これを使ったら面白いのではないか」と考える人が向いていますね。実際、1期生のメンバー全員にその傾向があります。

VCの課題を機動的に解決、テック業界で開花を狙う

――今後に向けたビジョンはありますか?

富永:あります。僕には、テックに強い起業家にフォーカスしたいという考えがあります。例えばインキュベイトファンドでは、すべて表に出てきている案件に投資していると思うのですが、それでは遅いのです。案件をピュアにソーシングするとなると、案件をつくりにいく必要があります。大企業や大学発であればインキュベートする動きが強く求められると考えています。

そういった課題に対して、若いGPが機動的に動く世界線があると見ています。そこにフォーカスした機能を実装することが、僕のビジョンです。特にテック業界では色濃く出ている部分があると思うので、そういう面にフォーカスしたGPが必要になると考えています。

――そのテーマに興味を持ったきっかけを教えてください。

富永:もともとテックのゼロイチをやるために大学で理系に進んだのですが、思った以上に新しいことができませんでした。なぜかというと、シンプルにお金がないからです。その出来事がきっかけで、お金のある環境であれば新しいことができるのかを調べて、可能だと知ったのがベンチャーやベンチャーキャピタルでした。今はお金があるところにいる状態なので今ならいけると考えました。

――「新しいことをしたい」と思ったのは、なぜですか?

富永:新しい技術は、純粋にワクワクするからです。研究室に在籍していたタイミングでAI医療が出始めました。AIの第1次ブームのような時代で、医師の働き方が劇的に改善されると言われ、その流れでAIメディカルも出てきています。

テクノロジーが社会を変えるという状況が、分かりやすく起きていた時代でした。しかし、そういう一種の流行りがある中でも獣医療にはAIが導入されていません。その理由は、シンプルにマーケットが小さく、お金がないからです。

テクノロジーが実装されて便利になりつつある業界とテクノロジーが向こう10年導入されない業界のどちらにも携わったので、その比較でテクノロジーを社会実装したいという気持ちが強くなったのだと思います。


インキュベイトファンドでは、25卒の新卒採用を実施しています!

インキュベイトファンドでは、次世代のイノベーションの創出に取り組める人材の育成に向けて、「ベンチャーキャピタルとして独立」を目指した25卒向け新卒社員の採用を開始したことをお知らせいたします。説明会を実施しておりますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

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>>富永のXはこちら

Zero to Impact編集部

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VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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