Incubate Campが起点になる理由
インキュベイトファンドが主催する「Incubate Camp」は、単なる起業家と投資家のマッチングイベントではない。選抜された16名の起業家たちと投資家(ゲストVC)が合宿形式で向き合う本イベントは、事業の転機をつくり、深い信頼関係を生む“起点”として、多くの起業家たちの記憶に刻まれている。
本連載では、Incubate Campの意義を様々な角度から紐解いていく。 第一回では「なぜ今、起業家は“合宿”に集うのか?」、第二回では「若手VCが描く“独立”と“支援”のリアル」に迫った。
そして今回は、過去参加者4名へのアンケートをもとに、参加のきっかけ、得られた刺激、事業の変化を振り返る。
第一回「なぜ今、起業家は“合宿”に集うのか?」- インキュベイトIncubate Campが目指す未来
第二回「VCを志すという決断」- 20代のキャピタリストが描く“独立”と“支援”のリアル
これ以上に豪華な顔ぶれはない」と即決
Incubate Campへの応募動機はさまざまだが、共通していたのは「この場所なら何かが変わる」という直感。そして多くの場合、きっかけは“誰かのひと言”だった。
株式会社iiba 逢澤奈菜さん
実績:総合優勝、ベストグロース賞2位
実は当初、参加に気乗りしていなかったというが、信頼する人物の後押しを受けてエントリーを決意。「どうせ落ちるし」と諦めかけていたところからの出場決定は、大きな転機となった。
株式会社iiba
「子育てしやすい社会を目指し、新たな子育てインフラを構築する」をビジョンに掲げ、子育て特化のマッププラットフォームの開発・運営。子育て世帯特化のマーケティング事業、自治体DX事業などを展開。
代表X:https://twitter.com/nanaizw
株式会社LOKIAR 伊藤健太さん
実績:総合3位
起業家の先輩たちが口を揃えて「絶対参加した方がいい!」と推す姿に背中を押された。複数の推薦が後押しとなり、満を持しての挑戦となった。
株式会社LOKIAR
「運び方の最大効率化」をビジョンに掲げ、LOKIAR企業間物流に特化した物流支援サービス「Meech(ミーチ)」の提供によるコスト最適化と食品3PL事業による物流マッチングを行っている。
Powder Keg Technologies株式会社 濱村将人さん
実績:総合2位
シード出資を受けたVCの紹介で存在を知ったという濱村さん。調べてみると「これ以上に豪華な顔ぶれはない」と感じ、すぐに参加を決めた。
PowderKegTechnologies株式会社
AI駆動の全自動ペネトレーションテストデバイス「MUSHIKAGO」を自社開発し、ITシステムに加え、産業制御(OT)システムへのセキュリティリスク診断(ぺネトレーションテスト)や専門的なコンサルティングを提供するサイバーセキュリティスタートアップ。
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株式会社Josan-she’s 渡邊愛子さん
実績:総合3位、ベストグロース賞1位、スポンサー・オーディエンス賞1位
実は2回目の挑戦だった渡邊さん。1度目の不採択にも関わらず、担当VCの勧めを受けて再挑戦。「今回はやりきった」と語る姿に、リベンジへの強い意志がにじむ。
株式会社Josan-she’s
家庭向け産前産後サービスを、オンラインとオフラインの両面で融合したサービスを提供し、2025年4月より自社施設である産後ケア施設「YUARITO」も展開。産院向けに人材サービスも提供。

最初は起業家とゲストVCのマッチングからスタート
ペアVCとの対話で見えた、自分では気づけなかった価値
参加当時、起業家たちはそれぞれに大きな課題と向き合っていた。そして、キャンプの2日間でゲストVCとペアとなり濃密な対話を重ねる中で、“自分の見方”にも変化が生まれた。
iiba 逢澤さんは「ユーザーの伸び悩みやランウェイ(企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間)の不安」があった中で、「自分が事業の弱みだと思っていた点を、ペアVCの立岡恵介(現:ALPHA)さんに“強み”として評価されたことで、視点が大きく変わった」と振り返る。
LOKIAR 伊藤さんは、「自社SaaSの伸び悩み」と「事業内容を伝える難しさ」に苦しんでいたが、宮宗孝光さん(DIMENSION)との丁寧な壁打ちを通じて、自社への“伝え方”が磨かれたという。
Powder Keg Technologies 濱村さんは、「サイバーセキュリティ領域の新規顧客獲得の難しさ」や「自己流のビジネスモデル」への疑念があったが、福島智史さん(グロービス・キャピタル・パートナーズ )からのフィードバックによって新たな市場性に気づいた。
Josan-she’s 渡邊さんは、「自信はあるが、事業の見せ方が難しい」という壁に直面していた。だが、中野慎三さん(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ)との対話の中で「Josan-she’sの事業はシンプルで力強い」という言葉をもらえたことで視界が拓けた。

ゲストVCとのメンタリング
Incubate Camp後に1.5億円を調達した企業も
Incubate Camp参加後、4社はいずれも大きな変化を経験している。
LOKIAR 伊藤さんは「自分の視座が一段上がった」と実感。Incubate Camp後は、事業の言語化能力が上がり、事業のフェーズチェンジにも成功したという。
事業の「伝え方」が大きく変化したことは共通点としてあり、事業への自信と確信を持って動けるようになったことで資金調達の機会が広がり、実際に調達を達成した企業も生まれた。iiba、Josan-she’sともに、Incubate Camp後に1.5億円の調達を実施。Powder Keg Technologies 濱村さんも「多数のVCから声がかかるようになり、資金調達の機会が広がった」とコメント。今後の展開に向けた地盤が整ったと話す。
株式会社iiba、プレシリーズAラウンドにて1.5億円の資金調達を実施
ジョサンシーズ、プレシリーズAラウンドで1.5億円の資金調達を実施

各チームのディスカッション(ブラッシュアップ)の様子
「VCが寄り添う」という体験のリアル
Incubate Campで得られたのは、単なるメンタリングやピッチ修正に留まらない。全員が口を揃えて「本気で向き合ってくれるVC」という密度の高い支援を挙げる。
iiba 逢澤さんは「参加VC全員からフィードバックがもらえる貴重な機会だった」と話し、まさに“非日常”の密度の濃い時間だったと振り返る。
LOKIAR 伊藤さんは「ゲストVCだけでなく、IFのアソシエイトの下原 右多さんが、深夜まで壁打ち含めて対応してくれたことが印象的」と語り、「人として信頼できる」と感じたという。
Powder Keg Technologies 濱村さんは「逃げ場がない密度の高い環境」だからこそ、吸収スピードが速かったと振り返る。
Josan-she’s 渡邊さんは「PR含めて、起業家ファーストな動き方が本当に心強かった」と評価。調達にも直結するような支援体制が印象的だった。
また、パートナーを組んだゲストVCだけでなく、参加した16名のVCからのインプットやアドバイスをもらえる機会は後にも先にもここIncubate Campしかないのではないかと思っているという回答も。
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決勝プレゼンテーションの様子
Incubate Campは、問い直しと再出発の場
4人の起業家が語るように、Incubate Campは「転機」となり、「本気で自分と事業に向き合う場」でもある。ともに悩み、フィードバックを交わし、成長の加速装置となるこの“合宿”は、起業家にとって他に代えがたい学びの場であり、信頼と挑戦の“起点”なのだ。
現在、Incubate Camp 18th(2025年10月2日〜3日)エントリー受付中!
▶ 詳細・エントリーはこちら( https://camp.incubatefund.com/ )