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2021/04/28

挑戦に迷う起業家求む!12年目のスタートアップの登竜門インキュベイトキャンプの全貌

執筆者:

Zero to Impact編集部

2021年4月1日、「Incubate Camp 14th」のエントリーがスタートした。「本気で資金調達を目指すシード/アーリーステージ起業家のための、起業家・投資家合同経営合宿」として、11年目を迎える。過去13回の開催で約235名以上の起業家が合宿に参加し、累計調達金額は約500億円以上を突破。ラクスルやGameWithなどの有望な企業を多く輩出してきた。

2021年は、10月1日(金)から2日(土)に開催。早期エントリーした起業家への定期的なメンタリングや、エントリーした起業家のSlackコミュニティへの招待など、継続的な支援とコミュニティ形成に力を注ぐ。これらの取り組みと通して、起業家に届けたい価値とは?
開催当初から最前線で支えてきたインキュベイトファンド代表パートナーの和田圭祐と、Incubate Camp 14th主将のアソシエイトの神谷遼多と青野佑樹に聞いた。

【プロフィール】
和田圭祐 インキュベイトファンド 代表パートナー
2004年フューチャーベンチャーキャピタル入社、ベンチャー投資やM&A アドバイザリー業務、二人組合の組成管理業務に従事。
2006年サイバーエージェントへ入社し、国内ベンチャー投資、海外投資ファンド組成業務、海外投資業務に従事。2007年シード期に特化したベンチャーキャピタル、セレネベンチャーパートナーズを独立開業。
2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。

青野佑樹 インキュベイトファンド アソシエイト
2014年みずほ銀行入行。支店にて中堅中小企業を担当後、2016年にみずほ証券に出向。投資銀行部門にてECM業務に従事。みずほ銀行に帰任後は営業部にて主に上場企業を担当。
2018年インキュベイトファンドに参画し、投資先企業のバリューアップ業務等を担当。
神戸大学 法学部卒。

神谷遼多 インキュベイトファンド アソシエイト
2016年経済産業省入省。貿易管理政策業務等に従事。
2018年インキュベイトファンドに参画。アソシエイトとして投資先企業のバリューアップ業務等を担当。
北海道大学工学部、同大学工学院修了。

事業の成功率を上げるヒントを届けたい。開催当初からの変わらぬ思い

──いよいよ「IncubateCamp 14th」の募集が始まりました。あらためて、このプログラムの概要を教えてください。

和田:インキュベイトキャンプは、起業家と投資家が創業初期からパートナーシップを組み、事業創造を支援していくことを目的に開催している、一泊二日の合同合宿です。公募の中から選ばれた16名の起業家と、各VCから参加した投資家が、2人1組で事業のブラッシュアップに勤しみます。

最終日には、起業家たちがピッチ。総合順位のほか、最も成長した起業家に送られるベストグロース賞や、審査員の採点結果が最も高かった審査員賞など、さまざまな賞が贈られます。また、最もいいメンタリングをした投資家が選ばれる、キャピタリスト賞も設置。お互いに評価し合う「双方向性」はかなり大切にしていますね。

2020年のインキュベイトキャンプの様子

──なぜ、このように起業家と投資家がブラッシュアップをし合う場所が必要だと考えたのでしょうか?

和田:インキュベイトキャンプがスタートした2010年にさかのぼります。当時は、今に比べてシード投資がそこまで盛んではなく、アクセラレータープログラムなども国内には数えるほどしかありませんでした。

ただ、その頃は、急激にスマホシフトが進んでソーシャルゲームが盛り上がり、起業のハードルが下がりました。さらに、DeNAやGREEなど、1990年代から2000年代に立ち上がったベンチャーがどんどん成長し、上場する企業も出始めていたんです。そんな変化が生まれる中で、支援を必要とする起業家予備軍と、彼らを探し出し出資したい投資家が増えつつあるのを実感していました。お互いの出会いとブラッシュアップの機会を提供する必要があるのではないか。そう考えてインキュベイトキャンプを企画しました。

「投資家の視点やスケールできる事業の考え方を起業家にインストールし、事業の成功率を高めるようなヒントを届けたい」という思いは、11年経った今でも変わりません。

インキュベイトファンド 代表パートナー 和田圭祐 

──変わらぬ思いを大切にして、起業家に向き合い続けてきたんですね。この11年で、参加する起業家や投資の金額などはどのように変わりましたか?

和田:参加する起業家のフェーズや投資金額は、大きく変わりました。最初の3年間は、創業前や創業初期のシードの起業家が多く参加していました。出資の金額も、数百万円とかなり少額でしたね。今は、PMF前後のシリーズAの起業家の参加が増えています。

地道な活動やインキュベイトキャンプ出身の起業家の活躍によって知名度と注目度が上がり、協力してくれるVCが増え、出資できる資金が増えたことが大きいです。

──参加する起業家の事業案には変化はありますか?

和田:かなり変化していますね。当初は、スマホシフトが盛んだったことからアプリなどのインターネットサービスが多かったです。ここ数年は、デジタルの力でレガシー産業を変えていくような、革新性の高い事業が増えています。

狭くなりがちな視野を、格段に広げてくれる2日間

──インキュベイトキャンプに参加した起業家の皆さんは、どのような変化を遂げるのでしょうか?

和田:投資家とのディスカッションを通して、事業内容を変えたり、アプローチすべき顧客を絞り込んだりと、2日間でかなり解像度が上がる印象を受けますね。

たとえば、オンライン習い事マーケット「classmall」を運営するYAGOの井上さんは、インキュベイトキャンプをきっかけに新たなプロダクトを立ち上げることになりました。

もともと同社は、スペースオーナー向けの予約・決済システムを提供していました。インキュベイトキャンプに参加をした時は、カテゴリーを広げて、インストラクターなど自分のスキルを武器にしている人たちへのリーチを始めようとしていたんです。

しかし、ユーザーのペインは予約や決済ではなく「そもそもの集客にあるのではないか」という仮説が、ディスカッションを通して生まれました。現在ある予約・決済システムとは別に、集客の支援をするシステムを作る必要がある、と。最終的には、スキルのあるインストラクターと、そのスキルを学びたい生徒が集うプラットフォームを作ることにしました。集客支援のプラットフォームは、もともとあった予約・決済システムとも相乗効果が生まれます。このようにサービスの方向性を修正した結果、1億円の資金調達に成功。2021年2月にプロダクトをリリースしました。

 

メンタリングの様子

──インキュベイトキャンプに参加していなければ、転換が起きなかったんですね。

和田:そうですね。ただ、全員のビジネスプランが大きく変わるわけではありませんよ(笑)。方向性は変えずに、サービスを届ける顧客を絞るなどして成功確度を上げる起業家もいます。

社内規定の作成や運用のSaasを提供するKiteRaは、インキュベイトキャンプをきっかけに顧客を大きく絞りました。もともと社労士事務所にフォーカスをして事業展開をしていたのですが、事業会社からのニーズもあり、サービスを少しずつ広げていたんですね。ですが、ディスカッションで「社労士事務所に絞り込んで、No.1を狙ったほうがいい」というアドバイスをもらったそうです。社労士事務所のマーケットだけでも十分にマネタイズができるのと、ターゲットを広げすぎるとプロダクトの個性が弱まる懸念があるからでした。最終日のピッチでは、「社労士マーケットでNo.1を目指す」と意気込んでいましたね。結果、ゲストVCとして参加してくださっていたキャピタリストからの出資も決まり、順調に事業を伸ばしています。

KiteRaは、総合順位2位に。さらに最も成長を見せた起業家に贈られる「ベストグロース賞」も受賞した。

継続的な支援とコミュニティ形成で、起業家の可能性を開花させる

──12年目の今年は、青野さんと神谷さんが主将を務めます。そもそも、インキュベイトキャンプにはどのようなイメージを持っていましたか?

神谷:「起業家一人ひとりに愚直に向き合っている」という印象が強いです。昨年は、インキュベイトキャンプに475社の企業にエントリーしていただきました。選考までの期間、メンタリングを希望する起業家とは、全員と30分から1時間ほど顔を合わせて事業の相談に乗ります(※2020年からはオンラインで実施)。どんなに忙しくても、起業家のために時間を作り、最大限のアウトプットをする姿はまさに起業家ファーストだと感じていました。

青野:私は、双方向性が非常に面白いと感じていました。和田がお伝えした通り、インキュベイトキャンプは、投資家が起業家を評価するだけではなく、「キャピタリスト賞」という形で起業家も投資家を評価するんですね。初めて参加した時は、その双方向性に驚きましたね。お互いに評価されるからこそ、本気でぶつかり合える。熱量の高さには、毎年圧倒されていましたね。

インキュベイトファンド  アソシエイト 青野佑樹

──起業家ファーストであり、インタラクティブなプログラムであると。その流れを踏襲しつつ、2021年はどんな工夫をしているのでしょうか?

青野:2021年は、より継続的な支援に力を入れていこうと考えています。2020年までは、メンタリングは1社につき一度だけだったのですが、5月16日(日)までにエントリーいただいた起業家の中から、十数名限定で継続的なメンタリングを実施します。私たちが伴走し、事業案の検討からピッチ資料の作成まで支援をしていきます。

──なぜ、継続的な支援を?

青野:これまでインキュベイトキャンプに携わる中で、もう少しエントリーのハードルを下げたいと感じていました。皆さん、事業案を作り込んでからエントリーをしようと思うあまり、直前に応募が殺到してしまうんですね。方向性はいいものの、事業案が練りきれていないために選考から漏れてしまう方もいらっしゃって、非常にもったいないと感じていました。
複数回のメンタリングを通して伴走できる体制を整えれば、起業家の可能性を開花させることにもつながるのではないかと考えました。

神谷:合わせて、2021年はエントリーした起業家の方を全員Slackに招待します。起業家は、孤独に戦っていることが多いんですよね。インキュベイトキャンプに応募する起業家は、フェーズが似ていて、同じような壁にぶつかっていることも少なくありません。数百もの起業家が集まるプログラムですから、このつながりを大切にして、コミュニティ形成につなげていきたいです。

フェーズや場所など、あらゆる垣根を超えて、多くの起業家に出会いたい

──インキュベイトキャンプの募集が始まり、少しずつ応募が増えてきている頃だと思います。どんな起業家に応募して欲しいですか?

和田:2020年は、事業案の完成度が高いスタートアップのエントリーが多く、投資家からも高評価でした。そういったレベルの高い起業家はもちろんですが、2021年はチャレンジの機会を伺っているような起業家にもどんどん出会っていきたいです。特に、起業して間もない段階での資金調達は、「いい出会いがあるかどうか」が鍵を握ります。みなさんに前進のきっかけを提供できるプログラムとして、インキュベイトキャンプを機能させていきたいです。

神谷:私は、首都圏だけではなく、地方の起業家にもどんどん応募して欲しいと思っています。2020年に引き続き、選考やメンタリングはオンラインで行います。これまで場所がネックになっていた起業家にもチャンスが広がるという点では、とてもいい試みだと感じています。

また、地方は首都圏に比べて、スタートアップのエコシステムが構築されておらず、情報量も少ないと聞きます。インキュベイトキャンプを、エコシステム構築のきっかけにしてほしいですね。

もちろん、場所だけでなく、性別、業種問わず多くの人たちにお会いしていきたいです。

神谷遼多 インキュベイトファンド アソシエイト

青野:今回は、継続的に支援できる仕組みを拡充させて、創業前の起業家にも間口を広げています。「インキュベイトキャンプへの参加が、起業の後押しになった」という方が現れれば、主将冥利に尽きますよね。

定期的にメンタリングする中で、「こんなふうに事業を考えていった方がいいんじゃないか?」「資金調達はこう進めていった方がいいんじゃないか?」など、伴走しながら形にしていけることが楽しみです。

すてに起業している人たちに前進のきっかけを届けることはもちろん、起業の「きっかけづくりとしての役割も拡充させていきたい。そうすることで、スタートアップ全体が盛り上がっていくのではないかと思います。

──ありがとうございました!

インキュベイトファンドでは、Incubate Camp14thに参加するシード・アーリーステージの起業家を2021年8月20日(金)まで募集しています。
2021年5月16日(日)までにエントリーいただいた起業家・スタートアップのうち十数名限定で定期メンタリングを実施。インキュベイトファンドのメンバーが数ヶ月間伴走し、事業案の検討からピッチ資料の作成まで支援を行います。
ぜひ、こちらからご応募ください!

Zero to Impact編集部

寄稿者

VCが運営するスタートアップ・VC業界の情報発信マガジン「Zero to Impact」を運営しています。起業家の魅力や、スタートアップへのお役立ち情報を発信します。ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が運営。

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