『Incubate Camp』は、本気で資金調達を目指すシード/アーリーステージ起業家のための起業家/投資家合同経営合宿です。過去14回の開催で240名以上の起業家が合宿に参加し、累計調達金額は500億円を突破しました。
Incubate Camp 14thでは、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛を受け、前回に続いて選考プロセスを全てオンラインで実施しました。当日はコロナ感染対策を徹底し、マスク・フェイスシールドの着用徹底や立食形式の懇親会の廃止、検温・消毒の徹底を行った上でオフラインで開催しました。
Incubate Campの様子は参加者以外にほとんど伝わっておらず、謎に包まれたイベントという印象の方も多いのではないでしょうか。今回は、1泊2日にわたるイベントの全貌をわかりやすく解説していきたいと思います。
Incubate Campとは
インキュベイトファンドが主催するIncubate Campは、起業家と投資家が創業初期からパートナーシップを組み、事業創造を支援していくために立ち上げられました。参加スタートアップ企業に対しては、シード資金調達にとどまらず数千万〜十億円単位の資金調達を含めた機会を提供しています。
開催頻度:年に1度
参加者:シード・アーリステージの起業家、著名ベンチャーキャピタリスト
目的:有望な起業家を、VC業界横断的に支援する
特徴:VCと起業家がペアを組み、熱い想いを競う
<Incubate Campの参加キャピタリスト(ゲストキャピタリスト、審査員/敬称略・氏名五十音順)>
・グロービス・キャピタル・パートナーズ|今野 穰
・DBJキャピタル株式会社|内山 春彦
・グロービス・キャピタル・パートナーズ|仮屋薗 聡一
・東京大学エッジキャピタル|郷治 友孝
・サイバーエージェント・キャピタル|近藤 裕文
・三井住友銀行|佐藤 正義
・iSGSインベストメントワークス|佐藤 真希子
・Coral Capital|James Riney
・W ventures|新 和博
・ジェネシア・ベンチャーズ|田島 聡一
・グローバル・ブレイン|立岡 恵介
・Spiral Capital|千葉 貴史
・STRIVE|堤 達生
・Eight Roads Ventures|村田 純一
・XTech Ventures|手嶋 浩己
・伊藤忠テクノロジーベンチャーズ|中野 慎三
・ANOBAKA|長野 泰和
・Delight Ventures|南場 智子
・JAFCO|沼田 朋子
・STRIVE|根岸 奈津美
・Bonds Investment Group|野内 敦
・Z Venture Capital|堀 新一郎
・WiL|松本 真尚
・中小企業基盤整備機構|山岸玲子
・Incubate Fund|赤浦 徹
・Incubate Fund|和田 圭祐
・Incubate Fund|村田 裕介
・Incubate Fund|Paul Mclnerney
Incubate Campの流れ
Incubate Camp 14thは、2021年10月1日(金)〜2日(土)に千葉県のオークラアカデミアパークホテルにて開催されました。Day1には起業家による5分間ピッチと全ゲストVCによるメンタリング、そして、それらを踏まえたドラフト形式でのマッチングを行いました。起業家とVCの各ペアは一晩かけて事業とプレゼンテーションをブラッシュアップし、Day2の午後には決勝プレゼンテーションで事業プランの完成度や一晩での成長度を競います。Day2の夜は表彰式を兼ねた懇親会で交流を深め、盛りだくさんの1泊2日が終了となります。
起業家とVCがそれぞれ16名ずつ集結し、起業家にとっては日常業務から離れて1泊2日じっくりと事業成長のみを考える機会ということで、次世代のイノベーションを担っていくようなスタートアップが生まれるよう、インキュベイトファンドとしても精一杯サポートさせていただきました。ここからは、Incubate Campの全貌を潜入レポート形式で解説していきたいと思います。
潜入レポート前編──Day1
7:00 品川駅周辺集合
参加起業家とインキュベイトファンドスタッフは、大型バスで一緒に会場へと向かいます。朝の集合がとても早いですが、バス内は基本的に静かで寝ることもできるので、ここは頑張りどころです。過去のインキュベイトキャンプでは、バスの中でピッチをしていたこともあったそうですが、車酔いなどの問題でバス内は自由時間となりました。台風にもかかわらず、時間通りにお集まりいただきありがとうございました。
8:00 オークラアカデミアパークホテル到着
ホテルに着いたら検温シートを記入し、開場までDay1ピッチの準備をします。マスクの着用やアルコール除菌を徹底し、飛沫感染の回避に努めました。
10:00 開会式
自己紹介や注意事項の説明などを行います。ゲストキャピタリストの方々の自己紹介は面白いと評判で、ピッチでアピールできる起業家に対し、キャピタリストが全体にアピールできるのはここしかないという意気込みもあってか、大変印象に残るお話を頂いています。
10:30 起業家ピッチ(Day1)
Day1の5分間ピッチでは、起業家が事業内容や今後の展望をプレゼンし、キャピタリストがガイドラインに沿って評価します。キャピタリストがペアを組みたい起業家を見つける場であるだけでなく、キャンプが終わった後に資金調達につなげたいVCに興味を持ってもらう機会でもあるため、このピッチで会社の魅力をいかに伝えるかは参加起業家にとって大変重要です。
12:30 昼食
広い会場でソーシャルディスタンスを保ちつつ、皆さんで昼食を食べます。休憩や食事の時間を通して、同期参加者どうしの横のつながりができていくのもインキュベイトキャンプの魅力の一つです。過去の参加起業家の方からは、キャンプ終了後もSNSやプレスリリースから同期参加者の動向を知ることで良い刺激を受けているという話を頂いています。
13:30 メンタリング
4時間半にわたるメンタリングでは、起業家全員がゲストキャピタリスト全員のメンタリングを受けることができます。非常に長丁場ですが、1日でパートナー級のキャピタリスト16名からフィードバックをもらえるというのは、起業家にとって大変得難い機会です。様々な視点、角度からの指摘を受けることで視野が広がり、事業成長の大きな一歩になると期待できます。
このメンタリングはピッチに対するフィードバックであるだけでなく、Day1夜に控える起業家とキャピタリストのマッチングに向けて、相性を見極めるための時間でもあります。投資判断や資金調達先選びにおいて、非常に重要度が高い要素の一つが、起業家とキャピタリストの相性です。一度VCから資金調達を行うと、そのVCとの付き合いは短くて数年、長ければ10年以上になります。ビジョンや価値観を中長期ですり合わせられそうか、相性の見極めは非常に重要です。メンタリング中の会話を通して、人としての相性が良いか、話していて違和感がないかもこの時間で確認することができます。
19:00 ドラフト指名の結果発表・マッチング
ピッチとメンタリングを踏まえ、キャピタリストは参加起業家を“ペアを組みたいと思った順”に選択していただき、ドラフト方式でマッチングを行います。起業家とその人を指名したキャピタリストが壇上に呼ばれ、起業家とキャピタリストが一対一でマッチングされればペア成立です。ただし、キャピタリストによる指名が重複した場合、キャピタリストは壇上で起業家に対し自分と組むメリットをアピールし、起業家は1人のキャピタリストを選びます。例年ならキャピタリストが手を差し出して起業家が握手に応えたらマッチング成立となりますが、昨年度に引き続き今年は接触を避けるため、握手はNGとしました。
<起業家 × ゲストVCマッチング>
・株式会社Connect Afya 嶋田 庸一さん × グロービス・キャピタル・パートナーズ 今野 穣さん
・LIFEHUB株式会社 中野 裕士さん × サイバーエージェント・キャピタル 近藤 裕文さん
・株式会社Opt Fit 渡邉 昂希さん × iSGSインベストメントワークス 佐藤 真希子さん
・9seconds株式会社 渡邊 将太さん × Coral Capital James Rineyさん
・株式会社SEAM 石根 友里恵さん × W ventures 新 和博さん
・株式会社Bizibl Technologies 花谷 燿平さん × ジェネシア・ベンチャーズ 田島 聡一さん
・株式会社Parame 岡野 亮義さん × 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ 中野 慎三さん
・キビタス株式会社 森下 将宏さん × ANOBAKA 長野 泰和さん
・株式会社OUI 清水 映輔さん × JAFCO 沼田 朋子さん
・アグリぺディア株式会社 石田 渡さん × STRIVE 根岸 奈津美さん
・ascend株式会社 日下 瑞貴さん × Bonds Investment Group 野内 敦さん
・ラウンズ株式会社 合田 翔吾さん × Z Venture Capital 堀 新一郎さん
・株式会社Nossa 福井 高志さん × WiL 松本 真尚さん
・Crezit株式会社 矢部 寿明さん × Eight Roads Ventures 村田 純一さん
・株式会社マチルダ 丸山 由佳さん × Incubate Fund Paul Mclnerney
・DXER株式会社 向井 拓真さん × Incubate Fund 村田 裕介
ここで、起業家による5分間ピッチをキャピタリストが5点満点で採点したものを集計した、Day1時点での順位が発表されます。
<Day1時点での順位>
1位:Crezit株式会社 矢部 寿明さん
2位:株式会社OUI 清水 映輔さん
3位:株式会社Connect Afya 嶋田 庸一さん
4位:9seconds株式会社 渡邊 将太さん
5位:キビタス株式会社 森下 将宏さん
Day1で順位の高かった起業家の方はマッチングしたキャピタリストとともにさらに事業・ピッチをブラッシュアップし、残念ながら上位にランクインできなかった方は総合評価だけでなくグロース賞も狙いつつ、Day2の決勝プレゼンテーションに向けて急成長してほしいです。
20:00 夕食
ペアの起業家とキャピタリストは、この夕食時間後から事業・ピッチのブラッシュアップを開始します。24時には休戦協定で起業家は自室に戻らなくてはならないため、日付が変わるまでにいかにキャピタリストと意見を交わし、ピッチを改善できるかが勝負になります。夕食はささっと済ませて皆さんブラッシュアップに向かっており、時間を大切に使おうとしているのが伝わってきました。
20:30 ブラッシュアップタイム
ホワイトボードのある場所や広い机、ロビーのソファなど、各ペアは思い思いの場所で事業・ピッチのブラッシュアップを行っていました。ブラッシュアップの時間はDay1の夜とDay2の午前中しかないので、起業家自身の持ち味を最大限引き出しつつ、いかにキャピタリストが出せるバリューを取り込んでより良いものとするか、時間の使い方にも個性が表れていました。
24:00 ブラッシュアップ終了
22時頃からぱらぱらと解散し始め、起業家の皆さんは自室での作業、あるいは翌日の体力を回復するための休息に戻っていました。翌朝7時半には作業会場が開場するので、早めに切り上げて朝早く再集合するのも戦略といえます。広いお部屋を全員に一人一部屋ご用意しているので、睡眠時間が短くなってしまう場合も体はよく休まることを願います。
運命の決勝プレゼンテーションを含む、【潜入レポート後編】に続きます。